「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/16 第21条 「知る権利」侵害の懸念(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 表現の自由は大事って言うけど、どうして?
先生 先生は今、国の政策に賛成でも反対でも、自由に意見が言えます。憲太君もそうでしょう。そうして議論できるから民主的な政治が進んでいくんです。だから、表現の自由が「民主主義の根幹」と言われるんですよ。
憲太 「知る権利」という言葉を新聞でよく見かけるけど。
先生 先週成立した特定秘密保護法では「国民の知る権利を侵害する」と各地で反対の声が上がりましたね。「知る権利」は、自由に情報を得たり、国に対して情報の公開を求めたりする権利です。
憲太 表現の自由と関係があるの?
先生 表現する側に自由があるなら、その情報を受け取ることも権利と考えようということです。戦後、新聞やテレビの影響力が大きくなり、社会生活を送る上での情報の重要性が増す中で生まれた考え方ですね。第21条で保障された人権とされ、新聞やテレビの報道は「国民の知る権利に奉仕するもの」と位置付けられています。
憲太 さっき、先生は「国に情報公開を求める権利」とも言ったけど。
先生 知る権利には、市民が情報を自ら収集する権利もあると考えられています。2001年の情報公開法施行で、国が持つ情報の開示を求められるようになりました。いろいろな事実や意見を知ることは、政治に参加する上でも必要なことですよね。特定秘密保護法は、秘密の指定が恣意(しい)的に行われる懸念があり、取材方法によっては処罰対象となる点で知る権利を侵害すると指摘されています。
憲太 1項には集会や結社の自由もあるね。
先生 「結社」というのは、同じ目的で複数の人が集まる団体です。反原発や反TPPのデモ行進は集会の一つで、自分の意見を表明するための手段として自由が保障されています。次は表現の自由の制約について考えます。=次回も第21条。17日掲載です
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<現行憲法
第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。