「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/15 第20条 政教分離「基準不明確」の声も(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 「信教の自由」と言われてもピンとこないね。
先生 中世の西欧で市民が自由や権利を手に入れた歴史は、君主による宗教弾圧への抵抗から始まりました。信教の自由は大事なことだったんです。
憲太 どんな宗教でも信じていいの?
先生 信仰するのは自由です。ただ、滝行(たきぎょう)と称し人を死なせるなど害を及ぼすような行為は制限を受けます。
憲太 ところで、政教分離って何?
先生 国家と宗教を切り離すことですね。戦前は神道が国教的な地位を与えられ、精神面で軍国主義を支えました。その反省から第20条は1項2文目と3項で厳格な政教分離を定めています。
憲太 首相の靖国神社への参拝は?
先生 政府の見解は「私人としてなら問題ない。公式参拝戦没者追悼の目的なら政教分離に反しない」としています。ただ中曽根康弘首相(当時)の公式参拝小泉純一郎首相(同)の参拝については、違憲性を指摘した高裁判決があります。
憲太 自民党案は「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないもの」を、禁じられる活動の例外としたね。
先生 地鎮祭への公金支出は政教分離に反しないとした最高裁判例を踏まえたものです。ただ、「何が政教分離に反するかは判例でも基準が不明確」という指摘があります。=次回は第21条です
==============
<現行憲法
【第20条1】信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又(また)は政治上の権力を行使してはならない。
【第20条2】何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
【第20条3】国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。


<自民案>
【第20条1】信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
【第20条2】何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
【第20条3】国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。