「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/14 第19条 思想・良心の自由、他国に例少なく(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 第19条からは「自由」という言葉が並んでいるね。
先生 何事にも縛られず、自分の意思で自由に生きる権利「自由権」の規定です。憲太君は今、好きな本を読み、好きな音楽を聴けますね。しかし、過去の歴史では、権力者が都合良く自由を制限してきました。だから、憲法に細かく書いて、自由を守ろうとしているんです。
憲太 第18条も自由権の条文?
先生 「身体の自由」と言って、人間的な扱いを受けないような体の拘束を受けたり、強制的に苦しい仕事をさせられたりすることを禁じています。
憲太 「思想・良心の自由」って?
先生 簡単に言えば、何を考えても自由ということです。「内心の自由」とも言いますね。
憲太 それは当たり前じゃないの?
先生 戦前・戦中は治安維持法という法律があり、共産主義など特定の思想を持っていることを理由に多くの人が逮捕されました。憲法では、表現や信教の自由とは別に条文を設けて、思想・良心の自由を定めています。他国の憲法ではあまりない例なんですよ。
憲太 自民党案は第19条の2が追加されたね。
先生 個人情報を不当に得ることを禁じる条文ですね。自民党「草案Q&A」では「プライバシー権の保障に資するため」としています。
憲太 個人情報を保護する法律があったよね。
先生 個人情報保護法です。法律では、個人情報を守る施策をすることを、国の責務としていますが、この憲法案は主語が「何人も」となっています。大阪大大学院の鈴木秀美教授は「憲法は権力による人権侵害を禁じるもので、一般の私人間の禁止規定を書き込むべきではない」としています。プライバシー権は現在も、第13条を根拠に認められています。=次回は第20条です
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<現行憲法
【第18条】何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又(また)、犯罪に因(よ)る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
【第19条】思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。


<自民案>
【第18条1】何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
【第18条2】何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
【第19条】思想及び良心の自由は、保障する。
【第19条の2】何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。