「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/13 第15条 参政権、自民は国籍要件明記(毎日新聞 2013年12月20日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 「公務員」という言葉が初めて出てきたね。
先生 公務員というと、国の省庁や県・市の職員を思い浮かべますが、国会議員や大臣も国家公務員とされます。「公務員の選定や罷免は国民固有の権利」とした第15条は参政権をうたった条文ですね。国民が主権者として、国の政治に参加する権利のことです。
憲太 国民の権利といっても、全部の公務員を選ぶことなんてできないよ。
先生 現実的にはそうですよね。この1項は、公務員は、国民が信頼してその地位に就けているからこそ、職務ができるんですよ、ということを言っています。そして、2項で、公務員は国民全体の利益のために職務をしなければいけないとうたっていますね。
憲太 3項の「普通選挙」って?
先生 財力や性別に関係なく参加できる選挙のことです。20歳以上の国民すべてに選挙権が認められたのは1945年です。それまでは、女性には選挙権がなかったんですよ。
憲太 自民党案には「日本国籍を有する」という言葉が加わっているね。
先生 現在、日本国籍ではない外国人には選挙権がありません。ただ、地方自治体の首長や議員を選ぶ地方選挙権については、在日韓国・朝鮮人永住外国人にも認めていいのではないかという議論があり、国会に法案が提出されたこともあります。自民党は従来反対で、国籍要件を憲法案に明記していますね。第16条は国などの機関に要望を行う「請願権」の保障、第17条は公務員の違法行為に対する「国家賠償請求権」を定めています。=次回は第18、19条です
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<現行憲法
【第15条1】公務員を選定し、及びこれを罷免(ひめん)することは、国民固有の権利である。
【第15条2】すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
【第15条3】公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
【第15条4】すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
【第16条】何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又(また)は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
【第17条】何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。


<自民案>
【第15条1】公務員を選定し、及び罷免することは、主権の存する国民の権利である。
【第15条2】全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
【第15条3】公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による。
【第15条4】選挙における投票の秘密は、侵されない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。
【第16条1】何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。
【第16条2】請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。
【第17条】何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体その他の公共団体に、その賠償を求めることができる。