やっぱり被害あった

食中毒発生を公表せず 不二家商品、9人被害(中国新聞 2007年1月17日(水))

不二家は十七日、一九九五年に販売した同社の洋菓子商品「ペコちゃんのほっぺ」で発生した九人の食中毒問題を公表していなかったことを明らかにした。
(中略)
不二家によると、食中毒の原因となった商品は大阪府泉佐野工場で製造し、関西、中部、中国地区で販売。商品を食べた九人が九五年六月二十三日から同二十八日にかけて嘔吐(おうと)、下痢、腹痛を訴えたという。大阪府が立ち入り検査を実施、ブドウ球菌などが原因だった。
不二家泉佐野保健所に食中毒の発生を報告。工場を営業停止とし、消毒など衛生面の対策を講じたという。商品の回収も実施した。保健所は被害者が二十人未満だったことから公表はしなかった。



保健所が公表しなかったものを公表していなかったからといって非難するのは行き過ぎなのかどうかわからない*1が、そんなことまでも非難されてしまうような事態になってしまった、ということだろう。
今まで被害があったことが発覚していなかったこともあり、「消費期限」を守らなかったことについての不二家への非難は、実際に被害があった雪印と並べて報道されてもわかりにくかったように思う。
今や食品は、冷凍過程があったり薬品や放射線やその他もろもろの方法で保存期間が相当長いものが多い。加工食品は言うまでもなく、魚介類や肉、野菜を始めとする生鮮食品にしてもそうだ。
少し考えてみると、法の上ではどのようになっているかわからないけれど、それぞれの段階でそれぞれの原料には消費期限があるのではないか、と思いつく。今回発覚した不二家の問題にしても、消費期限当日の原料を使って加工した製品は新たな消費期限が設定されるわけで、プロセスにおいて消費期限というのはどんどん更新されるものだ。
では、消費期限とはいったい何か。
生産者が「(一定の条件下で)これ以上長く保管すると品質が劣化して食用可能でなくなる」と設定する期限、ということだろう。極端なことを言えば、原料が腐っていようが何しようが、何らかの方法によって加工することにより加工後の一定期間安全に食用可能となるならば、その期限を「消費期限」と設定してよい、ということなのではないだろうか。そうだとすると、今回の不二家の一件で「消費期限が切れた原料を使用した」というのがなぜそんなに問題視されるのか、疑問がわくかもしれない。実際、そんな感想の表明も散見しないではない。
やはり問題は、「プロとしての矜恃」ということと、それともう一つ、消費者の方を向いているか、ということになるのではないだろうか。簡単に言うと、どんな些細なことも、消費者にきちんと説明できるかどうか、消費者に安心してもらえるかどうか、ということだと思う。その中で、「ウチでは消費期限の切れたものを使いません」だの「雑菌が繁殖しない環境で、チェック体制も万全です」だのがウリになるわけで、例えばHACCPだとかISO9000シリーズだとかはそうした体制のお墨付き、という看板になる。
いくら「原料の消費期限がどうあれ、加工品の消費期限は新たに生産者が決める」と言ったって、そのチェック体制が経験と勘だったり、ネズミ発生など衛生面の問題が指摘されたりしていれば、誰がその口から出る「ウチの製品は安心してご賞味いただけます」を信頼するものか。いくら安全でおいしいものだったとしても、それを手にとってもらうための努力が足りないと指弾されてしまうのはやむを得まい。
いつもきれいに掃除されていて、「表向き」ゴキブリもいない、お手ふきも臭わない、手入れの行き届いた(ように見える)店で食べる絶品とまでは言えない食事と、厨房は油でドロドロ、ゴキブリもネズミもいそうな店で得も言われぬ美味を堪能するのと、普通の人なら前者を選ぶに決まっている。「味のみがすべて」と言うのはよほどの好事家しかない。
「消費期限」問題と関連があるかどうかはまったくわからないわけだが、実害があったことが発覚してしまったことで、10年以上前に食中毒を出していながらその後に何も改善されていなかったということになって、今後の存続も危ぶまれることになるんじゃないだろうか。
今回の一件で「ISO9000シリーズ」に権威がないことが知られてしまったのが、他社にとって一番の痛手かもしれない。

*1:他社で同様の対応をとっていないと言い切れるのか、そういう会社・団体・個人などすべてを今まで非難する報道をしてきたのか、という点に疑問はある。