教科書採用への布石か

埼玉県教委:教育委員長に「つくる会」元副会長(毎日新聞 2007年10月25日(木))

埼玉県教育委員会は25日、教育委員長に「新しい歴史教科書をつくる会」元副会長の高橋史朗氏(56)を選出した。就任は26日で、任期は1年。上田清司知事に請われる形で04年、県教育委員に就任していた。
(後略)



去年の教育委員長選挙の際には「新しい教科書をつくる会」教科書の監修者だったことを指摘され、慣例を破って選出辞退したのだが、そろそろほとぼりが冷めたとでも考えたか、今回は当たり前のように委員長の座に就くつもりのようだ。高橋史郎氏は「埼玉師範塾」の塾長兼理事長でもあり、そもそも教育委員長としての適格に問題があるものと思われるが、上田知事としては何とか自身の教育観を埼玉県政に反映させたいと熱望しているようで、教員の養成や教科書の監修に携わる/携わった経歴を持つ高橋氏をぜひとも委員長の座に据えたいらしい。
従軍慰安婦」について否定的見解を披瀝するのみならず県立施設の展示にまで難癖を付けて一般市民に自己の歴史観を押し付けようと画策している不見識な知事は、高橋氏の主催する私塾の名誉会長を務めており、教員採用や教科書採択の場での不分明は、高橋氏のみに問われるのではなく任命権者としておよび当事者として知事により重く問われることになる。
知事に再選を果たして間もないうちにこの暴挙である。もとより上田知事は「つくる会」教科書の熱烈な支持者だ。「つくる会」自体はみっともない内部分裂をしたが、今後出版される教科書の中で、知事の考えに近いものを採択させようとする圧力は大きくなるだろう。しかし、世の趨勢に目もくれず自身の見解のみに軸足を置いて横暴を行うようなことは断じて許されない。
知事の任期はまだ何年もある。この先どのような展開となるか、しっかりと監視が必要だ。