防衛省の疑惑を追及するのが先

山田洋行、PKO物資調達で裏金 3千万円捻出(朝日新聞 2007年11月15日(木))

軍需専門商社「山田洋行」の米国子会社元社長・秋山収容疑者(70)=業務上横領容疑などで逮捕=が、中東での国連平和維持活動(PKO)に絡む物資調達業務の利益約3千万円をイスラエル事務所から米国に送金させる手口で裏金を作っていたことが関係者の話でわかった。東京地検特捜部は、同事務所幹部らから任意で事情を聴いた。
この裏金は日本に送金され、山田洋行元専務の宮崎元伸容疑者(69)=同=が守屋武昌・前防衛事務次官(63)の接待費などに使っていた疑いがあるという。
(後略)



守屋氏喚問で「宴席に額賀・久間氏」 民主、問責も視野(朝日新聞 2007年11月16日(金))

防衛省守屋武昌・前事務次官(63)は15日、参院外交防衛委員会での証人喚問で、軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者(69)=業務上横領などの容疑で逮捕=との宴席に額賀福志郎財務相久間章生元防衛相が同席していたことを明らかにした。額賀、久間両氏は防衛庁長官経験者で、喚問終了後、いずれも「記憶にない」などと話した。
(中略)
福田首相は15日夕、首相官邸で記者団に「額賀氏から『宮崎、守屋両氏から接待を受けたことはない。仮にその会合に出席していたとしても、誰が出席していたか覚えていない』という報告があった」と明らかにした。そのうえで「そういう会合に出ることは政治家としてよくあることだ」と述べ、説明責任を果たせば同席自体は問題ないという認識を示した。
(後略)



額賀財務相の宴席同席は問題なし、接待受けたことないと聞いている=町村官房長官(ロイター2007年11月15日(木))

町村信孝官房長官は15日午後の会見で、額賀福志郎財務相が「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者との宴席に同席していたと守屋武昌前防衛次官が参院外交防衛委員会で証言したことについて、何ら問題はないとの見解を示した。
官房長官は「いろいろな会合に出席する方がいても、それがどうかしたのか」として、「額賀財務相への対応は特に考えていない」と述べた。
また「額賀財務相の秘書官からは、額賀氏は宮崎氏や守屋氏から接待を受けたことはないと聞いている」とした。
守屋前次官は15日の参院外交防衛委員会で、2年ほど前に額賀財務相と、ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長が来日した際に宮崎氏も交えて会議を行ったと述べた。
これについて官房長官は「ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長を囲む会に出席していたとしてもすぐ退席したので、誰が出席していたのか記憶にはないとのことで、何ら問題はない」とした。国会での法案審議に支障がないのかとの質問には「これは次元の違う話だ」として、野党は法案の審議を始めてもらいたいと述べた。



何とも呆れ果てた実態が明らかになってきた。こんなロクでもない組織に関わる法案については、まずロクでもない組織について徹底的に疑惑究明をし総括が済んでからでなければ議論の端緒に着くことさえ許すわけにはいかない。
守屋氏の証人喚問で防衛省初代大臣と長官経験者である現職大臣の名が上がった。しかもそれらの接待に使ったカネは、PKOに絡んで裏ガネ化した資金だということも浮かんできた。
こんなことが行われていた組織に仕事を任せておくわけにはいかない。小池氏が大臣の際に人事ですったもんだをしたけれど、あの時は守屋氏の人事案を受入れることで決着したのではなかったか。そうであれば、また食い物にされる人材がわんさかいるということではないか。守屋氏は省への昇格にもずいぶんと尽力した人物だったようだし、そもそも「省」になるのが間違いだったということだ。しかも大臣まで疑惑に関わっていたのだとすれば、端的に言って彼らには監督能力がなかったということに他ならない。
福田氏は「そういう会合に出ることは政治家としてよくあることだ」、町村氏は「いろいろな会合に出席する方がいても、それがどうかしたのか」などと言い問題視しないつもりであることを表明してごまかそうといるが、とんでもない話だ。
過去には憲法上許されないであろう作戦行動について秘密裏に研究したり国民を監視したり憲法破りの駆け付け警護で勝手に戦争を始める覚悟をしてみたり、あたかも文民統制を無視するようなフリをしてみせる。情報を漏らしたり資料・記録をなくしたり無いと言い張ってみたりとタガは緩みっぱなし。そして、業務に絡んでカネをちょろまかされ、あまつさえその資金で接待を受けて力を付けた人物が牛耳り、長官や大臣がそれを管理できないでいたのである。こんないい加減な体たらくを総括せずして何が「国際公約」か。
防衛省とは巨大な武力組織である。ゆめゆめそれを忘れてはいけない。少なくとも、再度「庁」へ格下げのうえ、いや、部局でもいいくらいだが、きちんとした文民の監視の下に置いておくしかない。
海外派遣に関する法案について議論がしたいのであれば、防衛省の不祥事解明は「次元の違う話」でもなんでもなく、まず最初にクリアすべきハードルだ。順番を間違えてもらっては困る。