在日米軍再編の一環

在日米軍再編「日米が満足する形に」 米国防長官が自信(asahi.com

ラムズフェルド米国防長官は6日、アジア訪問からの帰途、国防長官専用機中で朝日新聞記者との単独会見に応じた。世界的な米軍再編の一環として日米間で検討されている沖縄などの在日米軍の再編について「日本側にとっても米国にとっても完全に満足できる形で決着するだろう」と述べ、戦力の維持と基地周辺の負担軽減を両立できるとの楽観的な見通しを示した。主権移譲後のイラクで治安維持に当たる多国籍軍への自衛隊派遣については「各国がやりやすい形で貢献すべきだ」として、可能な範囲内での「貢献」に期待を寄せた。

長官は、アジア太平洋地域における米軍再編について「米国は太平洋国家の一員として、この地域に関与し続ける。その中で日本は極めて重要な同盟国だ」と話したうえで「我々は、地域の人々に役立つような方法で関与する」と述べ、基地周辺の負担軽減などに配慮する意向を示した。

長官はこれまで、沖縄米軍基地の縮小問題について「安全保障上の抑止力を維持しながら、日本政府と合意形成を図りたい」と述べてきたが、負担軽減にも踏み込んで進める考えを示した発言だ。

再編をめぐる議論について、長官は「兵力や戦車、航空機や艦船の数でとらえるのは間違いだ。能力に注目すべきだ」として、緊急事態への即応性や機動力、さまざまな脅威に対処できる「柔軟性」などの能力を重視すると指摘し、沖縄の米軍基地について「極めて役に立つ基地だ」と高く評価した。

再編の一環として米国が示している在韓米軍の再配置や削減の方針が北朝鮮側に誤ったシグナルを与えるのではないかとの懸念に対しては「北朝鮮は、米軍が急速に戦力を増強でき、空軍力や海軍力を容易に動かす能力を持つことを理解している」と話した。イラク戦争で見せた展開能力を金正日政権が認識しているとの見方を示し、十分な抑止力を維持できることを強調したものだ。

イラク人道支援活動を続ける日本の自衛隊の活動については「独特だとは思わない。各国が自分の国にとってやりやすい形で貢献すべきだというのが私の信念だ」と述べ、日本が「貢献」を続けることに期待を表明した。

多国籍軍への参加をめぐっては「活動の内容や決定の理由は問わない。我々は感謝するだけだ」と述べ、米国から具体的な要請はしないものの、参加を歓迎するとの立場を明らかにした。

ブッシュ政権外交政策に対する反発がアラブ世界だけでなく欧州や日本にも出ていることに対しては「納得してくれる人もいれば、異なる見解を持つ人もいる」と反論。「米国が世界の問題を引き起こしているわけではない。我々は同じ考えを持つ地球規模の有志連合諸国と協力してテロを防ごうとしている」と語り、テロ抑止に向けた各国との協調を重視する姿勢を示した。

日米間で技術協力を進めているミサイル防衛(MD)については、北朝鮮のミサイル開発などを念頭に「弾道ミサイルとミサイルに搭載する強力な弾頭が世界中に拡散している」と懸念を表明。こうした脅威に対して「抑止力を生み出す防衛的な方法」を考える必要があるとして、日本側に積極的な協力を求めた。

米司令官:在沖海兵隊の一部、本州移転望ましい(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

米太平洋軍海兵隊のグレグソン司令官は8日、在日米軍再編について、在沖縄海兵隊(約1万7000人)の一部を日本の本州に移転することが望ましいとの考えを示した。ロイター通信がワシントンで記者団に語ったと伝えた。司令官は、在沖海兵隊のグアム移転について問われ「日本から離れることは、多くの問題が起こりそうな地域から海兵隊を遠ざけることになる」と国外移転への反対を表明。そのうえで本州移転については自衛隊との訓練強化のためにも望ましいとの考えを示した。

米軍、グアム空軍司令部を横田基地へ アジア太平洋管轄(asahi.com

米国が進める海外駐留米軍の再編(トランスフォーメーション)で、米軍がグアムの第13空軍司令部を横田基地(東京都)の第5空軍司令部に統合する構想を持っていることがわかった。第13空軍は中国を含む太平洋やインド洋の空域を管轄しており、構想は横田基地朝鮮半島などを除くアジア太平洋の司令部機能を置くことを意味する。米陸軍も米ワシントン州の第1軍団司令部をキャンプ座間(神奈川県)へ移す意向があるといわれ、海軍横須賀基地(神奈川県)を拠点とする第7艦隊、沖縄の第3海兵遠征軍を含め、米国が日本をアジア太平洋の軍事作戦上の基軸(ハブ)と位置づける思惑が鮮明になった。

米軍は、テロなどの新たな脅威に対応するため、約1年半前から世界的な体制の見直しを進めている。冷戦時代の敵と異なり、現代の脅威は「いつ、どこに現れるか予測しがたい」(国防総省高官)と分析。出撃拠点となるハブ基地を確保し、補給能力や機動力を高めて、遠方へも部隊を急派できる体制づくりを目指している。

横田基地には、在日米軍の空軍部門である第5空軍の司令部がある。また、空軍としては太平洋で唯一の空輸航空団があり、指揮機能と物資輸送の拠点となっている。

グアムのアンダーセン基地に司令部がある第13空軍は、B52爆撃機6機と空中給油機を持つ。世界最大級の空軍給油施設も備え、米本土の爆撃機などの補給拠点になっている。これが統合されれば、第5空軍司令部はアフリカ東岸までの広大な空域で、哨戒活動など平時の任務や、人事管理などについて責任を負うことになる。

日米安保条約は、米軍の駐留目的を「日本と極東の安全、平和のため」(6条)と定める。第13空軍司令部の管轄範囲は極東をはるかに超えるが、外務省は「主たる任務の実態が極東の安全、平和のためであれば、ある時、ある部隊が他の地域へ移動しても問題ない」としている。

国防総省は01年、「4年ごとの戦略見直し(QDR)」で、米軍の世界的な体制再編の枠組みを示した。日本を含む北東アジアの主要基地については、「戦力投入のためのハブとなりうる」として維持する方針を表明した。

キャンプ座間に移転する計画の第1軍団もアジア太平洋全域を管轄する。これに伴い、横田基地にある在日米軍司令部をキャンプ座間に移し、アジア太平洋全域を管轄する新たな司令部とする案もある。

日米両政府は15日にサンフランシスコで開かれる外務・防衛両省庁の審議官級の協議で、米軍の再編案について正式な協議に入る。国防総省高官は13日、「数週間ないし数カ月以内に大統領に提言できる」との見通しを明らかにした。計画が固まり、実際に部隊の移動が始まるのは「05年末か06年はじめになるだろう」という。

太平洋に2隻目の空母配備へ 半島や中台にらみ米軍方針(asahi.com

米軍が、世界的な再編(トランスフォーメーション)の一環として、横須賀基地(神奈川県)を拠点とするキティホークに次ぐ、2隻目の空母を太平洋に配備する方針であることがわかった。母港はハワイかグアムに置くことが検討され、配備は数年後になる見通しだ。朝鮮半島や中台の緊張をにらんだ動きで、修理や補給をになう在日米軍基地の負担が増えそうだ。

米海軍の空母12隻のうち、キティホーク以外は米本土に母港がある。その1隻が太平洋へ移される。空母以外の護衛用のイージス艦や潜水艦なども配備される。キティホークは横須賀に残る。

グアムには広大な訓練空域があり、ハワイよりも空母艦載機の訓練には適している。しかし、乗員の住宅などの設備面ではハワイが優位だ。海軍関係者によると、配備まで少なくとも2〜3年かかるという。

キティホークは08年に退役する予定だが、後継艦が入り、その後も太平洋での2隻態勢を維持する方針だ。

国防総省は01年9月、「4年ごとの戦略見直し(QDR)」で、「西太平洋で空母機動部隊のプレゼンスを増やす」と決めた。約1年後、部隊配備計画のガイドラインを作成し、「東アジア重視」を基本方針とした。

米国は6月、陸軍を中心として在韓米軍の3分の1に当たる1万2500人を削減する方針を示した。一方で、「アジアでは海空軍戦力を増強する」(ファイス国防次官)との方針を掲げている。韓国の陸軍削減を、空母機動部隊の増強などで補う考えとみられる。

空母は艦載機に精密誘導爆弾が搭載され、1日に数百キロ移動する機動力もある。米海軍は、地上攻撃力や制海権確保の中核と位置づけている。

空母が2隻態勢になることで、特に横須賀基地の機能が強化される可能性がある。グアムかハワイに配備される機動部隊の修理を横須賀で分担する可能性もある。

キティホークは01年のアフガニスタン攻撃や昨年のイラク戦争に出撃。代わって日本周辺海域には米西海岸から別の空母が配備された。

厚木基地岩国基地へ移転構想浮上 日米審議官級協議(asahi.com

在外米軍の再編をめぐる日米の外務・防衛審議官級の非公式協議が16日までサンフランシスコで開かれ、米海軍厚木基地(神奈川県)を米海兵隊岩国航空基地(山口県)に移転する構想が浮上した。しかし空母艦載機による夜間発着訓練(NLP)の移転も伴うため、騒音問題などで地元の反発が予想され、実現の可能性を含めて継続協議となった。

協議には日本側から長嶺安政外務省北米局参事官、防衛庁の山内千里防衛局次長らが、米国からローレス国防副次官らが出席。15、16両日に開かれ、17日も今後の協議の進め方を話し合う。

米国側は世界規模で進めようとしている米軍の変革・再編の全体像を説明し、在日米軍再編についても具体的な構想について意見を交換した。その中で厚木基地移転構想も検討されたようだ。

厚木基地では、横須賀を事実上の母港とする米空母キティホークの艦載機部隊がNLPを行っている。騒音被害がひどく、地元自治体はNLP硫黄島での完全実施を強く求めている。

打開策の一つとして米国側が考え出したのが岩国基地への移転構想だ。

岩国基地に駐留する主力機は艦載機と共通しており、エンジン整備などの対応がしやすいため、これまでも同基地でNLPを実施することがあった。さらに同基地の滑走路を1キロ沖合に移設する事業が08年度に終わるため、騒音被害も軽減できるという判断もあるようだ。

しかし、岩国基地NLPの予備施設に指定されるたびに、山口県をはじめとする地元自治体は騒音被害を懸念し、同基地を使用しないように在日米軍司令官に要請してきた。日本側はまだ提案として受け止めておらず、引き続き可能性を検討する見込みだ。

このほか、沖縄県の米軍基地問題で日本側は在日米軍再編にあわせて地元負担を軽減するように米国側に改めて要請。沖縄駐留海兵隊の本土移転の可能性などについても話し合った模様だ。

米軍再編:米、再編案を日本に提示 厚木→岩国移設など−−政府間協議(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

日米両政府の外務・防衛審議官級協議が15日、サンフランシスコ市内のホテルで開かれ、米側は在日米軍の司令部機能強化を狙った再編案を提示した。米側は日本政府に対し、5月に再編案を提示している。しかし、参院選への影響を避けるため、日米政府間の調整で選挙後の協議開催となった。このため、今回の協議での米側の提案は「5月案」に沿った内容になっている。

米側の主な提案内容は(1)米海軍厚木基地(神奈川県)を米軍岩国基地山口県)に移設(2)グアムの第13空軍司令部を横田基地(東京都)の第5空軍司令部に統合(3)陸軍第1軍団司令部(米ワシントン州)をキャンプ座間(神奈川県)に移転(4)在沖縄米海兵隊の一部を日本本土に分散−−など。日米両政府は最終日の16日も引き続き協議をするが、移転先などをめぐって日本国内の反発も考えられるため、日本側は国内の調整が必要な提案に関してはいったん持ち帰り、継続協議とする方向だ。

社説:在日米軍の再編 米世界戦略とどう向き合うか(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

これはまさに「世界の中の日米同盟」ではないか。米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)に伴う在日米軍の再編の流れは、小泉純一郎首相のこんな言葉を連想させる。

在日米軍の再編問題をめぐる日米の外務・防衛審議官級協議がこのほど米サンフランシスコで開かれた。実務者レベルの協議で協議内容は公式には明らかにされていないが、在日米軍基地の初の大再編だけにさまざまな問題が協議されたはずだ。

米軍の変革・再編は、冷戦後の国際テロや大量破壊兵器の拡散など新たな脅威に機動的に対処するのが目的だ。米国は日本をその戦略拠点に位置付けているようだ。

再編構想として、(1)グアムの第13空軍司令部を横田基地(東京都)の第5空軍司令部に統合し、太平洋全域を管轄する(2)陸軍第1軍団司令部をキャンプ座間(神奈川県座間市相模原市)に移転し、在日米軍司令部を横田から座間に移す(3)沖縄の普天間飛行場返還の早期実現に向けて名護市辺野古沖以外への移転も検討する−−ことなどが報じられている。

これらの構想が実現すれば、陸、空軍の司令部機能の日本への移転という大再編になる。それにより在日米軍が中東なども含めた広範な地域の危機に対応することになるのではないか。

だとすると、この再編は在日米軍基地の使用を日本と極東の平和と安全を維持するためだと規定した日米安保条約6条の枠を超えることになりはしないか。自衛隊が共同作戦行動をとれば憲法が禁ずる集団的自衛権の行使に踏み込む恐れも出てくる。単なる部隊の再編ではないのだ。

一方、在日米軍の再編に絡んで沖縄の海兵隊の一部をキャンプ富士(静岡県)やキャンプ座間に移転する案が浮上している。騒音問題を抱える厚木基地(神奈川県)の戦闘機の夜間発着訓練を岩国基地山口県)に移すことも検討されているという。

在日米軍基地の75%が集中する沖縄の負担軽減は急務である。在日米軍の部隊の一部を海外に移転するなどして大幅に削減するよう望みたい。本土側が沖縄の負担を一定程度背負う覚悟も必要だ。

事は単なる防衛問題ではない。国の進路にかかわる重要な外交問題であり、内政問題だ。「対米重視」より踏み込んだ関係になるのなら、そのメリット、デメリットを慎重に検討すべきだ。政府は米国の世界戦略に関するより多くの情報を収集しなければならない。

小泉首相は可能な限りそうした情報を国民に伝え、理解を求めなければならない。イラク戦争以来、「対米追随」と批判されてきただけに、なおさらきちんとした説明が必要だ。国会での十分な議論が必要なのは言うまでもない。

首相は03年5月の米クロフォードでの日米首脳会談でブッシュ米大統領と合意した「世界の中の日米同盟」という言葉をしばしば口にする。しかし、国民の十分な理解がなければ、その言葉がうつろに響くことになる。