首相、映画鑑賞中止し公邸へ・新潟の地震(NIKKEI NET)

首相、映画鑑賞中止し公邸へ・新潟の地震(NIKKEI NET)

首相官邸は、新潟県中越地方を震源とする震度6強の地震直後に「対策室」を設置。関係省庁などと連絡を取り合い被害状況の把握に奔走した。小泉純一郎首相は映画鑑賞の予定を変更して東京・五反田の首相公邸に戻り、調査団の先遣隊派遣を直接指示するなど対応に追われた。
首相に一報が入ったのは1回目の地震から約10分後。東京・六本木ヒルズ内のホテルで開かれていた国際映画祭の開会式に出席中のことだった。首相はこの後、松たか子さん出演の新作映画の鑑賞をする予定だった。
ヒルズ内の映画館に移動した首相は午後6時40分ごろ、「上越新幹線で脱線」の報告を聞いて公邸に戻ることを決めた。ただ「舞台あいさつを見ずに帰るのは申し訳ない」との理由で、冒頭だけは観覧したという。
首相は公邸に着いた後、秘書官を通じ情報収集や被害者救出を指示。首相官邸では村田吉隆防災担当相が対策室の指揮をとったが、細田博之官房長官ら他の閣僚とは電話などで連絡を取り合うにとどめた。

新潟地震:発生時、小泉首相は映画館 退出は午後7時8分(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

新潟県を中心とする地震首相官邸は発生直後の午後6時に対策室(室長・野田健内閣危機管理監)を置き、自衛隊、警察、消防など緊急体制をフル動員しての初動対応にあたった。一方、小泉純一郎首相は一連の地震が起きた当時は映画祭の開会式や、映画の舞台あいさつを聞くためホテルや映画館におり、退出したのは最初の地震が発生してから72分後の午後7時8分だった。
政府はマニュアルで「東京23区内で震度5強以上の地震が発生した場合。その他地域で震度6弱以上の地震が発生した場合」に官邸対策室を設置するよう定めている。野田危機管理監は6時10分ごろに官邸入りし、防災担当にあたる緊急参集チームを指揮した。
防衛庁は午後6時に災害対策室を置き陸自ヘリなど16機が出動。7時半には情報収集のため高田の陸自連隊を出た隊員23人が長岡市に到着。9時5分に新潟県知事が情報収集目的で災害派遣を要請した。警察、総務省消防庁も6時までに対策にあたる本部を設置した。
一方、最初の地震の発生時、首相は東京・六本木ヒルズのホテルにいた。発生から約3分後の午後5時59分、第17回東京国際映画祭開会式に出席。「首相になると『なぜ、この忙しい時に映画なんか見るのか』と批判され、行きにくくなった」とあいさつし、会場の笑いを誘った。
同6時6分、岡田秀一・首相秘書官からメモで新潟地震の第一報を受けた。岡田氏によると首相は最初の地震には気づかなかったようで、メモの一報に驚いた様子だった。15分ほど情報を収集したうえで映画「隠し剣 鬼の爪」の舞台あいさつを見るため同ヒルズの映画館に移動。控室で官邸からメモで連絡を受けた。3度目の地震と新幹線脱線の情報を受けた時点で首相は「公邸に戻ろう」と語ったという。
ただ、7時から山田洋次監督らの舞台あいさつがあったため、しばらく聞いて途中退席、品川の公邸に向かった。官邸では村田吉隆防災担当相が7時20分に緊急に記者会見したが「現時点で人的被害はわからない」と述べ、情報収集に追われる焦りがにじんだ。官邸での指揮は村田担当相があたり、首相は公邸で待機し電話で調整。細田博之官房長官と、3人の官房副長官も官邸には入らずに連絡を取り合った。
かつて阪神大震災村山富市元首相が初動対応を厳しく批判された経緯もある。岡田氏は午後10時半に改めて首相のこの日の動きを記者団に説明、初動の評価に神経質な様子をうかがわせた。