陸自幹部が改憲案 自民起草委の中谷委員長が依頼(asahi.com)

陸自幹部が改憲案 自民起草委の中谷委員長が依頼(asahi.com

陸上自衛隊の幕僚の幹部が、軍隊の設置や集団的自衛権行使の容認、国民の国防義務などを盛り込んだ憲法改正案をまとめ、自民党中谷元憲法改正案起草委員長(元防衛庁長官)に提出していたことがわかった。中谷氏は自ら作成を依頼したと話しており、防衛庁は「庁として検討した事実はない」(幹部)としている。しかし、憲法改正という政治課題について「制服組」が具体的な考え方を示したことは、「文民統制」や公務員の憲法尊重擁護義務の観点から問題となりそうだ。
防衛庁は、幹部の行動が自衛隊法61条に定めた「政治的行為の制限」などへの抵触や、防衛庁設置法23条に定めた「幕僚監部の所掌事務」の逸脱にあたらないか調査を始めた。
この文書は、陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班所属の幹部が作成。中谷氏によれば、今年夏ごろ、この幹部と憲法改正の意見交換をし、その結果を条文にするよう求めた。文書は7月末に渡されたが、11月に自民党憲法調査会がまとめた憲法改正草案大綱の素案には「全く反映していない」という。とはいえ、憲法に関する意見を制服組に求めた中谷氏の姿勢も問われそうだ。
内容は、安全保障分野での改憲の考え方やその実現で可能になる具体的施策を記した「憲法改正案」と、安全保障、司法、国民の権利義務に関する計8条の具体的な条文を記した「憲法草案」に分かれている。
「草案」では「国の防衛のために軍隊を設置する」と明記。さらに「集団的自衛権を行使することができる」とした。首相が「緊急事態の際は国家緊急事態を布告」することや、「すべての国民は国防の義務を負う」などの条文が盛り込まれている。また、軍事裁判所を念頭に置いた「特別裁判所」の設置にも言及している。
「改正案」では「集団的自衛権、並びに国連の集団的措置(集団安全保障)に基づく武力行使の容認」について「必要不可欠」と強調。これらを実現すれば「日本が攻撃されていない場合で米国等が攻撃された場合に米国等の防衛(日本以外を標的とするミサイルの迎撃を含む)」「有志連合軍に参加しての戦闘行動(アフガン、イラク等)」が可能になるとしている。
防衛庁幹部は5日、「陸幕内での個人的な文書か組織的関与があるのか調べている。仮に個人的であっても、政治的行為への関与を禁じた自衛隊法などの観点から、こうした文書を自民党側に示すのは適切でない」と述べた。
自民党改憲草案大綱の素案には「自衛軍の設置」「集団的自衛権の行使」「軍事規律を維持するための特別の組織(特別裁判所)の設置」などが盛り込まれているが、中谷氏はこの文書との関連について「個人的な勉強で『意見を聞かせてほしい』と頼んだが、私的な勉強のためのものであり、素案には全く反映されていない」としている。