逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第3条> 国民主権下の天皇

天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

天皇が行う「国事に関する行為」をめぐっては、内閣が決定することを定めているのが三条だ。天皇の行動を、議会制民主主義に基づく内閣の判断に委ねることで、天皇の行う「国事行為」が国民の意思に沿うものになるよう規定している。
間接的に、天皇国民主権の下に置かれることを示したもので、一条で「国民の総意に基く」と定めた天皇の地位を、内閣との関係で保障したと言える。
天皇に主権があると定めた旧憲法では、「国務大臣天皇ヲ輔弼(ほひつ)シ」と、内閣側は各閣僚がそれぞれ天皇を補佐する立場にとどまっていた。そのため、戦前は天皇の権威を盾にした軍部が、内閣の判断に従わない事態が起きた。
GHQが憲法草案づくりの基本方針とした「マッカーサー・ノート」には、「天皇の職務および権能は、憲法に示された国民の基本的意思に応えるものとする」と、国民主権下の天皇という考え方が示されている。その結果、内閣と天皇の関係は事実上、逆転。天皇は、「国事行為」を自分の判断で行うことを禁じられ、内閣のコントロール下に置かれることが明確にされた。
ちなみに、GHQ草案の策定で天皇条項を担当したのは、当時二十六歳の海軍少尉だったリチャード・プール氏。「昭和天皇と誕生日が同じ」ということを理由に、上司から担当を指示されたというエピソードが伝えられている。