逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第6条> 拒否できない『指名』

天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

この条と七条で、天皇が行う具体的な国事行為について書いている。
首相や最高裁長官の任命というと、とても大きな権限を持っているように感じるが、国民主権をうたう今の憲法では、天皇はあくまで象徴的な存在。それぞれ国会、内閣の指名に基づいて行うと規定されているため、天皇が独断で任命することはできなくなっている。
憲法では、首相任命に関する条文は特になかったが、天皇は「統治権ヲ総攬(そうらん)」するとされていて、公務員の任命権も天皇に一本化されていた。これに基づいて、天皇首相候補を選んで命じる「大命降下(たいめいこうか)」を行ってきた。
実際の人選は、天皇の相談役である元老らが推挙していたが、それでも今の天皇より大きな権限があったのは間違いない。
象徴天皇制が定着する今、天皇の権能を旧憲法時のように強化しようという意見はほとんどない。中曽根試案でも、天皇の権能については現憲法通りになっている。
ところで、「天皇は、首相任命の裁可を求められた際、拒否できないのか」という素朴な疑問を持つ人もいるだろう。さらに言えば、国事行為を行う前提となる「内閣の助言と承認」に対し、天皇は拒否権を持っているのだろうか。
この件について、内閣法制局衆院内閣委員会での国会答弁で(1)拒否権はない(2)(内閣に)質問はできる−という見解を示している。