逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第7条> 首相の解散権に論争

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令および条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大使および公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除および復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書および法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使および公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。

七条も、六条に続いて天皇の国事行為を具体的に書いている。いずれも三条で定めているように、「内閣の助言と承認」に基づいて行われる。
この中で、常に議論されてきたのが三番目の衆院解散。天皇の国事行為だが、内閣の助言と承認が前提になるため、事実上は首相に「解散権」があるとされる。実際、多くの歴代首相が、自身の政権にとって有利な時期を選択して「七条解散」を断行してきた。直近の二〇〇三年十一月の衆院選も「七条解散」による。
しかし憲法には、六九条に衆院不信任決議案を可決された場合の解散の規定があるだけで、首相に解散権を与える明文規定はない。
このため、首相が一存で解散時期を決めることには疑問をはさむ声がしばしば出る。〇三年の解散に先立ち、小泉首相と対立関係にあった野中広務・元自民党幹事長が「解散権の乱用は許されない」とかみつき、当時の綿貫民輔衆院議長も「首相が好き勝手に解散するのは院の無視だ」と苦言を呈した。
一九七八年にも、福田内閣が解散を検討しているとの観測が流れたとき、当時の保利茂衆院議長が七条解散の発動を制限しようとするメモを取りまとめたことがある。
中曽根試案は、七条が定めた十項目の国事行為をほぼそのまま踏襲したが、衆院解散については「解散詔書を発すること」と修正している。天皇が国政に関する権能を持たないことを、よりはっきりさせるのが狙いだ。