逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第8条> 皇室財産の集中防ぐ

皇室に財産を譲り渡し、または皇室が、財産を譲り受け、もしくは賜与することは、国会の議決に基づかなければならない。

皇室は戦前まで、膨大な財産を持っていたが、今は憲法の八八条で、すべての皇室財産は、国に属することが決まっている。この八条ではさらに、皇室の財産の授受を国会のコントロールの下に置いた。
国の財政が国会の議決に基づくことが八三条で定められているため、国に属する皇室財産も議決に基づくのは、当然のことともいえる。そういう意味からいうと、皇室と一部の国民との間で、不透明な財産のやりとりが生まれることを防ぐことに狙いもあるようだ。
ただ、すべての財産移動に議決が必要なわけではない。皇室経済法では、私的経済行為、外国との交際のための儀礼上の贈答など、少額の財産授受は議決を不要としている。このため、実際に議決が行われることは、そう多くはない。
最近では一九九三年、皇太子さまの結婚にあたり、皇室が、お祝いの物品を譲り受けることができるようにするための議決が行われた。
この条文に対する見直し論は、今のところほとんどない。しかし、衆院憲法調査会では、自民党のベテラン議員から「天皇の尊厳にかかわることは(首相を議長とする)皇室会議に委ねるべきではないか」という指摘も出たことがある。
ちなみに、王室の財産に関して憲法で規定しているのは、デンマーク、ベルギー、オランダなど。タイ、カンボジアなどにはない。