逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第5条> 天皇代行する『摂政』

皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

天皇が幼少や病弱の時、天皇に代わって職務を代行する「摂政」。成人の天皇を補佐する「関白」とともに、日本史の授業でよく耳にした官職だ。
古くは六世紀末、推古天皇時代に聖徳太子が摂政についたことが有名。平安時代は、藤原氏が独占した。
歴史上の官職のイメージが強い摂政だが、今の憲法でも設置が定められている。
摂政は、天皇の名で、国会召集や閣僚の認証などの国事行為を行う。
どのような場合に摂政が置かれるかなどについては、皇室典範の一六−二一条で規定されている。それによると、摂政が置かれるのは、天皇が成年(十八歳)に達しない時か、心身の疾患や重大な事故で自ら国事行為を行うことができず、皇室会議で摂政を置くことを決めた時。摂政になれるのは(1)皇太子、皇太孫(2)親王・王(3)皇后(4)皇太后−など、成年の皇族とされている。
天皇の病気療養や外国訪問など、摂政を置く必要がない時は、憲法四条の規定により、国事行為の臨時代行を適用する。
今の憲法下で、摂政が置かれたことはないが、旧憲法下では、大正天皇の病状悪化に伴い、皇太子だった昭和天皇が一九二一年から二六年の大正天皇崩御まで、摂政を務めた例がある。
ちなみに、関白に関する規定は今の憲法にはない。