逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第10条> 二重国籍の議論必要

日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

一〇条からは、国民の権利義務に関する条文が四〇条まで続く。旧憲法では、一八条から始まって三二条で終わっており、今の憲法は旧憲法の約二倍、「権利義務」が詰まっていることになる。
では、その権利を与えられ、義務を果たす日本国民とはだれなのか。多くの人は、国籍をあまり意識したことがないだろう。条文も、わずか二十字足らず。内容も「法律で定める」とあっさりしているが、この問題は奥が深い。
一〇条に基づいてつくられたのが、国籍法だ。この法律が定める日本国民の条件は、(1)生まれた時に父か母が日本国民(2)生まれる前に死亡した父か母が日本国民(3)日本で生まれたが、父母がともにだれか分からないか、どちらも国籍を持っていない−の三点。出生後でも、一定の要件を満たせば国籍取得(帰化)できる。原則として二重国籍は認めていない。
この制度は、親の国籍を重視する日本伝統の血統主義を反映している。国籍法には一九八五年の改正まで、(1)の条文に「母」がなく、父親を家長とする日本の家族観を象徴する条文だった。
血統主義と違い、その国で生まれれば国籍を得られるのを生地主義という。海外移住者が多い米国は生地主義だ。
一〇条についての衆院憲法調査会の議論では、「グローバル化外国人労働者の増加に備えて、二重国籍を認めることを検討してはどうか」(民主党・大出彰氏)などの意見が出ている。
今の憲法は「外国人の権利、義務」についての明確な規定がない。地方参政権付与や昇任試験拒否など外国人の権利をめぐる問題が今も尽きず、この問題についても議論を深める必要があるだろう。