逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第11条> すべてに先立つ権利

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在および将来の国民に与へられる。

基本的人権という言葉は、一九四五年のポツダム宣言にある「基本的人権ノ尊重ハ確立セラルベシ」に由来するようだ。「享有」は「生まれながら持っている」という意味。このため基本的人権は、国家や法律に先立って個人が持つ自然的権利と受け止められる。
自然的権利を「憲法が国民に保障する」と表現することには、違和感を覚えるかもしれない。だが、生まれながらの権利を、憲法が後から確認していると考えれば納得がいくだろう。
ちなみに、今の憲法で「永久に」という表現が使われているのは、九条の戦争放棄に関する部分と、基本的人権について書いたこの条、さらに、九七条の計三カ所だけ。それだけ、基本的人権を重く受け止めている証拠だろう。
自民党はじめ、各党とも基本的人権を堅持する考えに変わりはない。
中曽根試案では、現在の条文をほぼそのまま踏襲した。ただ、最初の一文を「何人も、生来の権利として、すべての基本的人権を享有する」と、すっきりした表現に変えている。
今後、基本的人権をめぐる議論は、憲法制定時に想定していなかった権利や義務を「加憲」するかどうかが中心となる。自民党憲法起草委員会の「権利と義務に関する小委員会」では、権利、義務以外に、「違反しても罰せられたりしない緩やかな努力規定」である「責務」という概念を、新たに取り入れるかどうかの検討が続いている。