逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第15条> 『公務員』の定義混在

公務員を選定し、およびこれを罷免することは、国民固有の権利である。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

公務員と国民との関係を定めた条文。公務員は、官僚、役人だけでなく、閣僚、国会議員、裁判官なども指す。
一、三、四項には、国民が公務員を選挙で選んだり、罷免したりできる権利について記されている。しかし、国民にすべての公務員の選定、罷免権があるわけではない。実際に選ぶことができるのは、国会議員、地方自治体の首長、議員ら。罷免は最高裁裁判官についてしかできない。
二項は、公務員が特定の政党に肩入れして政治活動を行うことなどを制約している。こちらは選挙で選ばれない一般職員を念頭に置いたものだが、国会議員も公務員であることを考えると、この項は少し現実離れしているようにみえる。その点で、誤解を招きやすい条文ともいえる。武田文彦氏の「赤ペンを持って『憲法』を読もう」(かんき出版)は、「『公務員』と総称で規定するのでなく、具体的に規定した方がいい」と指摘している。
公務員は「全体の奉仕者」であるため、団結権、団体交渉権などの労働基本権が制限されている。政府は公務員制度改革の中で、能力実績型の人事制度導入を検討しているが、労組側は見返りに労働基本権の拡大を求めている。
衆院憲法調査会では、こうした議論を踏まえ、「公務員の労働基本権について、具体的な規定を憲法に設けるべきだ」などの意見が出ている。労働基本権については、二八条で規定されている。