逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第16条> 請願権どう具体化

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令または規則の制定、廃止または改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

国民が、公的機関に苦情を申し立てることを保障した「請願権」の規定。この権利を具体化するシステムとして、国のオンブズマン制度の設置が議論になっている。
オンブズマン」は、スウェーデン語で「代理人」の意味。公正・中立な立場で行政を監視し、国民の権利や利益が侵された時は、事実を調査して行政への勧告や国民の救済を行う独立機関のことだ。欧州諸国では、国の機関として設置されている。
日本では、札幌市や川崎市などで導入例があるが、国の機関としては未整備だ。
衆院憲法調査会は昨年九月、オンブズマン制度発祥の地であるスウェーデンを視察。それを受け、十月に自由討議を行ったところ、「制度導入を積極的に検討し、憲法に明記すべきだ」(民主党鹿野道彦氏)という意見と、「一六条の請願権などにより、国会が行政のチェック等を行うことが認められている」(社民党土井たか子氏)と、あらためて憲法に書く必要はないとの考えに割れた。
民主党の旧民社党系議員でつくる「創憲会議」は今月十四日に発表した提言の中で、「憲法上の機関として議会型オンブズマンを設置することが望ましい」としている。
オンブズマン制度の必要性を訴える専門家は、日本の司法制度の問題を挙げる。国民が行政訴訟を起こしても、勝訴する例はわずかで、勝っても多大な費用と時間がかかることだ。オンブズマンは、司法に頼らずに国民が救済される道を開くことになる。
一方、国会議員が選挙民からの声を受けて、行政側に意見を伝えることも多い。国会には衆参両院に「行政監視」に関する常任委員会があり、政府の監視や国民の権利救済は立法府の仕事だと考える意見もある。