逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第18条> 徴兵制違憲の根拠

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

日本に奴隷制度はなかったが、戦前戦中には不法な逮捕、監禁や拷問、恣意(しい)的な警察権の行使によって、自由を奪われることがあった。一八条は、このような拘束や、本人の意思に反した労働を強制されることがないように、「人身の自由」を保障した。
「奴隷的拘束」は、人身売買や、「監獄部屋」のような人格を否定する身体の拘束を意味する。
この条文に基づき、労働基準法五条は、労働者の意思に反する強制労働を禁止。人身保護法は二条などで、違法に身体を拘束されている人の救済手続きを定めている。
憲法一八条は徴兵制の合憲性をめぐり、たびたび引き合いに出される。現在、日本に徴兵制はないが、政府は「徴兵制は本人の意思に反し、兵役という役務の提供を義務付けるもの」であるため、強制的な苦役を禁止した同条などに反するとの見解を示している。
これに対し、二〇〇二年五月の衆院憲法調査会では、自民党石破茂氏が「国を守ることが奴隷的苦役であるような国なら、国家に値しない」と発言、議論を呼んだ。石破氏はその後、防衛庁長官として入閣したため、持論を封印していたが、最近、自著「国防」(新潮社刊)で自身の防衛論、憲法観を再び展開している。
一方、自民党憲法起草委員会の「国民の権利・義務」小委員会では、「国防の責務」の議論が行われている。また、民主党内の旧民社党系議員らも「創憲」提言の中で、「国を守る責務」を盛り込むよう提案した。
「責務」とは、違反しても罰せられない緩やかな努力規定だが、徴兵制復活論にもつながる可能性をはらんだ考え方だけに、今後注目が集まりそうだ。