逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第29条> 財産権制限の論議活発に

財産権は、これを侵してはならない。
財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

資本主義の基本である私有財産制を保障する条文。財産権は、土地やモノの所有権だけでなく、債権や著作権特許権なども含む。
三項に分かれている二九条は、若干矛盾しているようにもみえる。一項で「侵してはならない」と無条件で財産権を認めているのに、二項、三項では「公共の福祉」と衝突したときは、財産権を制限する可能性を示しているからだ。
二、三項は、ダムや道路、空港建設などの「公益」のために、個人の土地を収用することを念頭に置いている。公益を優先する場合は当然、国などが補償することになる。
最近の改憲論議では、財産権の制限をもっとはっきり書くべきだ、という意見が活発に出ている。
民主党憲法調査会が昨年六月にまとめた中間報告は、「土地、エネルギーなどは公正、公共的な利用の観点などから、合理的な規制が置かれてしかるべきだ」と記述。同党の鳩山由紀夫元代表の試案では、「侵してはならない」という表現を「これを保障する」にあらためている。
衆院憲法調査会では、自民党議員が「憲法に『公共の福祉に反する場合は、財産権は制約を受ける』と明記すべきだ」と発言。共産党議員も「私有財産が制限されることは当然」と応じており、この件に関しては各党の考えは似ている。
また、昨今の世の中の動きに合わせ、財産権のうち著作権特許権などについては、「知的財産権」としてきちんと明記して保護すべきだという提案も多い。中曽根試案には、「知的財産権」が明記されている。