逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第37条> 裁判迅速化へ整う制度

すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、また、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

一項は、刑事裁判の公平、迅速、公開の要件を定めている。裁判に迅速さが必要なのは、不当に長く人を被告人の立場に縛り付けておくことは、人権侵害にあたるという考え方からだ。「遅すぎる裁判は、裁判の拒否だ」とも言われる。
ただ、実態は、検察側と被告人が起訴事実を争っている場合など、裁判が長期化することは多い。一九五二年に名古屋市で起きた公安事件「高田事件」にいたっては、十五年間も審理が中断されたままという異常な事態が生じ、最高裁が七二年、憲法三七条に基づいて免訴を言い渡した。
オウム真理教事件麻原彰晃被告の裁判では、昨年二月に東京地裁が死刑判決を出すまでに、初公判から約七年十カ月かかった。被告側が控訴しているため、判決の確定にはさらに年月がかかるとみられている。
迅速な裁判は、被告人の権利であると同時に、被害者や遺族の人権という面からも重要だ。その観点から、二〇〇三年には「裁判の迅速化に関する法律」が成立。一審は二年以内に終わらせることを目標に定めた。
憲法制定後、五十数年たって、やっと三七条の精神に沿った立法が行われたことになる。
昨年には、一般国民が裁判官とともに重大事件の刑事裁判を行う裁判員制度が、〇九年までに導入されることが決まった。政府は、この制度の導入も、裁判の迅速化につながると期待している。
容疑者の権利について書いた三四条の回でも紹介したが、三七条三項では、被告人の権利として国選弁護人を付けることを保障している。