逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第43条> 衆参ともに公選を規定

両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

憲法下の国会は、皇族や勅任議員による貴族院と、公選議員による衆議院の二院制だった。戦後、米国は国民主権を徹底するため、日本の政治体制の改革を進め、憲法に国会の民主化を明確に定めるよう求めた。
国会図書館には、米政府がGHQのマッカーサー司令官に対し、すべて公選議員による国会づくりを指示した文書が残っている。この方針に沿って四三条は生まれた。
憲法の草案を審議した一九四六年の帝国議会の記録によると、衆議院議員の公選制はすんなり合意したが、貴族院に代わる参議院議員の選出方法は調整が難航した。「衆院と同じ選挙制度にすると、独自性が発揮しにくい」との議論が百出したためだ。
結局、憲法制定時の付帯決議で、参院について「社会各部門各職域の知識経験者が議員となれるよう考慮すべきだ」と明記。これにより、参院選に全国区や比例代表などの選挙制度が導入されてきた。
だが、その後、衆院選挙制度改革で小選挙区比例代表並立制を採用したことで、今は両院の選挙制度が似たものになってしまった。参院選挙制度をめぐる議論は、古くて新しい課題なのだ。
日本の国会議員は、選挙区への利益誘導に奔走し、一部団体の組織票に支えられて当選してくるケースが多い。果たして、この条で定める「全国民を代表する」議員と言えるのだろうか。
十八世紀後半の英国の政治家エドマンド・バークは、自分の選挙区であるブリストル有権者たちに「皆さんが代表を選んだ瞬間から、彼はブリストルの議員でなく、英議会の成員となる」と演説したことで知られる。憲法の精神を理解すれば、日本にもバークのような骨太の政治家がたくさん現れるはずなのだが…。