逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第44条> 『選挙の平等』は発展途上

両議院の議員およびその選挙人の資格は、法律でこれを定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によって差別してはならない。

国会議員の選挙権、被選挙権について、「平等選挙」を保障しているのが四四条。これに基づいて、公職選挙法は満二十歳以上の日本国民に選挙権を与え、衆議院は満二十五歳以上、参議院は満三十歳以上の日本国民に被選挙権を与えている。
この条文は、一四条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という表現に似ている。法の下の平等と同じほど、選挙の際の平等も保障している証拠といえる。
選挙権が現在の形になるまでには、明治時代以来の普通選挙運動の歴史がある。衆院選挙制度が導入された一八八九年、選挙権は直接国税十五円以上を納める満二十五歳以上の男子に限られた。これは、人口の1・1%にすぎなかった。
その後、納税条件は少しずつ緩和され、一九二八年に男子普通選挙が実現。それでも、女性には選挙権は与えられなかった。女性に初めて選挙権が与えられたのは、戦後、この憲法の下で選挙が行われた時だ。
ただ、これで投票権の問題が完結したわけではない。今は、選挙権年齢の十八歳への引き下げ、永住外国人への地方参政権付与も大きな問題になっている。まだ、「選挙の平等」は発展途上なのだ。
四四条の理念を実現するには、選挙区当たりの有権者数を比較した「一票の格差」にも配慮しなければならない。
最高裁判決で、「衆院は三倍、参院は六倍程度までが合憲」とされたが、学説では「格差は二倍以内」が主流。現状は昨年九月現在で、衆院二・一六五倍、参院で五・一六四倍だけに、いずれも違憲の疑いがぬぐえない状態だ。衆院憲法調査会では、民主党議員から、一票の格差を抑える条項を盛り込むべきだという意見が出たことがある。