逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第45条> 任期4年 世界の中庸

衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

国会議員に対し、無期限に地位を保障すると、有権者の意に反して権力を乱用しかねない。これを防ぐために任期が定められている。衆院議員の任期は四年だ。
四年の根拠は、一八九〇年の帝国議会発足時にさかのぼる。当時、欧州諸国の議会の任期はプロシア(現ドイツ)三年、オランダ四年、イタリア五年、オーストリア六年、イギリス七年と、まちまちだった。
明治時代、衆院書記官長(現衆院事務総長)として選挙法を整備した林田亀太郎氏は自著で、「任期が長すぎると、議会は国民の意思を反映できず、短すぎると、選挙に費用がかかるうえ能力を発揮する余地がない。各国の中庸を取った」と説明している。
憲法に任期の規定はなく、法律で定められていた。現憲法で明記されたことで、「四年」の重みは増した。今の国会や各党の改憲論議でも、四年の任期を変えようという機運はない。
現在の世界各国の下院議員の任期は、米国が二年と極端に短いが、他の国は三年から五年の間に集中している。「四年」は今も、「中庸」ということになる。
ただ、日本では、任期を全うできると思っている衆院議員はほとんどいないだろう。時の首相は政権基盤を強めようと、衆院解散のタイミングを計っているため、衆院議員は常に失職の覚悟を強いられているからだ。
実際、戦後に実施された二十二回の衆院選のうち、任期満了に伴う選挙は一九七六年十二月の一回だけ。七二年に当選した議員が、唯一の任期満了経験者。「任期満了」を知る現役の衆院議員は、十八人しかいない。
ちなみに七二年初当選の小泉首相は、この中の一人だ。