逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第46条> 民意反映に任期短縮論も

参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

参院議員は衆院議員と違い、解散で突然バッジを失う心配はない。特別な事情がなければ、六年の任期を務め上げることができる。
身分が安定しているのは、衆院がその時々の政治テーマをめぐる民意を吸い上げる「即時対応型」に比重が置かれているのに対し、参院は「中長期展望型」の審議を期待されているからだ。
二院制を採用している他国の例をみても、米国は上院が任期六年で下院二年、フランスも元老院九年で国民議会五年と、第二院の方が任期が長い。
衆院四年、参院六年」というバランスは、諸外国と比べても違和感はない。
半分ずつ改選するのも、急激な変化を避けるための“安定装置”だ。衆参同日選挙が行われた時も、参院の半数が残るので国政に空白が生まれないメリットがある。ただし、憲法制定時に同日選が想定されていたかどうかは定かではない。
三年ごとに行われる参院選の最近の結果を見てみたい。消費税導入の是非が問われた一九八九年、自民党は惨敗し、長年維持してきた過半数を失った。その後、自民党は五回行われた参院選のうち、二回は改選議席過半数を獲得したが、全体では単独過半数を回復できていない。結局、自民党参院選で勝っても負けても、他党との連立で政権を維持し続けているのだ。
この現状は、“安定装置”の役割は見事に果たしているが、その時々の民意は反映していないとも言える。このため、与野党双方から「時代の流れを俊敏にくみ取り、反映させるためには六年の任期は長すぎる」と、任期を短縮すべきだとの指摘がある。衆院憲法調査会論議では、六年を二年か三年にすべきだという意見が出た。
しかし、任期の短縮は、ただでさえ「衆院カーボンコピー」と言われる参院が、ますます衆院に似てしまうというジレンマに陥りかねない。