逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第47条> 選挙制度に党略絡む余地

選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

今の憲法は国会議員の選挙制度について、普通選挙であることや任期などの大原則以外は、法律で定めるとしている。
憲法に書いていないのは、必ずしも制定段階で「手抜き」があったからではない。憲法で縛らない方が、時代の変化に応じて制度を変えられると考えられたからだ。
実際、選挙制度は、しばしば変更された。衆院中選挙区制の時代が長かったが、一九九四年、小選挙区比例代表並立制(定数五〇〇)に改められた。その後の定数削減で、今は総定数四八〇。
参院は、都道府県単位の地方区と全国区から成っていたが、八二年、全国区は比例代表に変わった。現在は選挙区一四六、比例代表九六の総定数二四二だ。
一連の改正は「時代の変化」だけでなく、党利党略、私利私欲も絡むことがある。小選挙区制は自民、民主などの大政党に有利とされ、比例代表は共産、社民などの小政党も議席が獲得できる。公明党中選挙区制の復活を期待している。こうした党の思惑に、個々の議員の選挙区事情も絡み、「政治改革」という名の選挙制度改革論議は今も続いている。
現在の選挙制度が、衆参両院で似たものになっているのも、こうした近視眼の改正が繰り返されているから、ともいえる。
参院憲法調査会の「二院制と参院の在り方」小委員会が先月まとめた報告書では、「両院の違いを明確にするため、選挙制度設計が極めて重要」と指摘。「似通ってきた衆参の選挙制度を変えていくべきだ」との意見を紹介している。衆院憲法調査会では、「選挙制度の具体的な内容も、憲法に規定すべきだ」という意見も出た。
諸外国の憲法は、選挙の制度に触れてあるものが多い。米憲法には議席配分方法まで書いてある。憲法で、お手盛りの制度改正に歯止めをかけようという意見は今後、台頭するかもしれない。