逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第48条> 首長との兼職認める案も

何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

衆参両院の議員の兼職を禁止し、両院の独立性を確保する条文。兼職で「両院議員」が多数登場すれば、二院制の意味がなくなってしまうので、当然といえば当然の規定だ。
この条文で想定していなかった事態が今、起きている。民主党吉田公一衆院議員は、二〇〇三年衆院選で惜敗。昨年の参院選にくら替え挑戦したが、こちらも敗れた。
しかし、吉田氏は、衆院比例代表東京ブロックと参院比例代表の両方の名簿に名前が残っており、今後、現職議員に欠員が生じた場合、衆院議員になることも参院議員になることもあり得る。両院議員の掛け持ちは憲法で禁じられているのに、「候補」の掛け持ちは認められているのだ。
ただ、同時に衆参両院の欠員が生じて、一気に両院の議席が回ってきたとしても、吉田氏はこの条に基づいて兼職はできず、衆参のどちらか一方を選ばなければならない。
公選法では、国会議員と地方自治体の首長や議員との掛け持ちも禁じている。例えば、知事が現職のまま国政に出馬することはできず、立候補と同時に知事を辞職したとみなされる。
米国などは、公職についたまま他の選挙に出ることが可能だ。ブッシュ米大統領は二〇〇〇年の大統領選に、テキサス州知事のまま立候補。民主党副大統領候補となったリーバーマン上院議員は大統領選と同日に行われた上院議員選にも掛け持ち出馬し、「副大統領になれない時の保険をかけた」と批判を受けた。
こうした諸外国の事例も念頭に置きながら、憲法論議の中で兼職を一部認めようという議論が少しずつ出ている。
昨年十二月に開かれた衆院憲法調査会では、民主党中川正春氏が「地方分権の流れに沿って、地方自治体の首長が参院議員を兼職するなどの大胆な改革が必要」と主張。参院改革の一環として兼職を認めることを提案した。