新潟中越地震:名災害救助犬「トマト」死す−−環境変化でストレス性胃捻転 /新潟(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

新潟中越地震:名災害救助犬「トマト」死す−−環境変化でストレス性胃捻転 /新潟(MSN-Mainichi INTERACTIVE)

中越地震の影響で、経験豊富な災害救助犬が死んだ。名前は「トマト」。メスのシェパードだ。十日町市のボランティアチーム「災害救助犬十日町」の花形として、山岳遭難などさまざまな現場に出動してきた。チームのメンバーは今、トマトへの思いを胸に、新たな災害出動に備えて訓練を続けている。


◇譲り受ける子犬に同じ名前、「先代以上に育てる」−−飼い主の西方さん
チームの隊長で、トマトの飼い主だった西方真さん(34)が、ケージの中で冷たくなっているトマトを見つけたのは昨年11月21日の朝のことだった。地震による環境の変化が原因のストレス性胃捻転(ねんてん)と診断された。
十日町市周辺では、救助犬が必要な建物の倒壊はなく、ペット店を経営する西方さんらは被災者とともに避難したペットの保護に力を入れた。
ペットがいるために避難所に入れず、車中泊エコノミークラス症候群にかかる人もいた。「ペットの負担をなくし、被災者を少しでも早く復興に向かわせたい」と思った。
西方さんは店の隣のドッグラン用のスペースにケージを100個用意し、延べ1300匹の犬猫を預かって面倒をみた。どうしてもトマトの世話は後回しになり、毎日1時間はしていた訓練や運動も思うようにできなくなった。訓練を楽しみにしていたトマトにとって、この変化はつらかったに違いない。
「勇敢な犬だった」と西方さんは振り返る。災害救助犬十日町阪神大震災を受け、97年に結成された。トマトはその主力だった。全国災害救助犬連合会に登録された救助犬は100頭余りいるが、警察や消防の依頼を受けて年に15〜20回も出動した犬はトマト以外になかった。
昨年9月には、苗場のスキー場近くの山にキノコ狩りに出掛けて行方不明になった男性を、見事に捜し当てた。捜索隊が「行きっこない」と近づかなかったがけ下に男性はいた。皆、「さすがだ」とトマトの能力に驚いたという。
9歳になり、今年で引退する予定だった。「死ぬなら、出動先の現場か老衰かと思っていた。ごめんな」と西方さんは目を潤ませる。
雪崩や福岡沖玄界地震など災害は続いている。災害救助犬十日町にもいつ出動要請が来るかわからない。その日に備えて、西方さんは間もなくシェパードの子犬を譲り受ける予定だ。名前はトマト。「先代のトマト以上の犬に育てることが最高の供養になる」と西方さんは言う。