逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第57条> ガラス張り審議明確に

両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

一般の人がテレビや新聞の報道などを通じて、国会の議論の内容を知ることができるのは、この条文が会議の公開を保障しているからだ。「会議」とは、本会議のこと。
会議公開の目的は、主権者である国民に議論の情報を提供することにある。会議の公開は、民主政治の前提ともいえる重要事項だ。本会議の会議録は、官報に記載される。
憲法では、国会の過半数の議決、もしくは政府の要求があれば秘密会にすることができた。つまり、政府にとって都合の悪い本会議は、すべて秘密会にすることができた。今の憲法の規定は、公開の原則が明確に貫かれたものといっていい。この条文の規定による「三分の二の議決」により本会議が秘密会で行われた例は、今のところない。
国会論戦が行われるのは、本会議だけではない。国会の運営は、英国のように本会議の議論を中心とする国もあるが、米国のように委員会の公聴会論議が重視される「委員会中心主義」の国もある。日本の国会は、委員会中心主義に分類される。
委員会の公開については、憲法に規定がないが、国会法で定められている。本会議とは違い、委員会は原則的に議員以外には非公開。委員長の許可を得た報道関係者らには公開される。一般の人が委員会を傍聴するには、議員の紹介が必要だ。会議録は、官報に掲載されない。
こう書くと、委員会の公開は、本会議と比べ閉鎖的に見える。しかし、実際は委員会の会議録を見るのは簡単だ。国会図書館のホームページ内の会議録検索システム=http://kokkai.ndl.go.jp/=で、戦後すべての本会議、委員会の議事録を閲覧することができる。