逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第56条> 『3分の1』緩い定足数訟

両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

一項は、衆参両院が本会議を開き、議決を行うために必要な最小限の出席者の数「定足数」を定めている。「総議員」は議員定数のことだと解釈されているので、現在の定足数は衆院が百六十人、参院が八十一人となる。
衆参本会議が定足数割れで審議できなかったことは、近年はない。衆院では、第二回国会(一九四八年)で二度あっただけ。参院でも、第三十回国会(五八年)を最後に例はない。ただ、国会議員にとって、本会議出席は最も大切な仕事の一つであることを考えると、「三分の一」という要件は少し緩すぎるようにもみえる。
委員会の定足数は国会法四九条で、「委員の半数以上」と規定されている。こちらは出席委員数の不足で審議が中断し、委員が呼び集められる場面がしばしばある。
出席議員の中にも、本会議場や委員会室で居眠りしたり、携帯メールに興じる議員を見かける。国会の機能低下が指摘されることが多い今、議員の意識向上が求められている。
昨年二月、自民党憲法調査会プロジェクトチームの会合では、「憲法の定足数の規定を削除すべきだ」という意見が出た。定足数に縛られることによって、議員が立法活動などに時間を割けなくなっているというのが理由だ。
しかし、定足数を削除すれば、議員の怠慢を増長させる可能性もある。そもそも本会議に出ずに立法活動を行うのを認めるということは、国会の空洞化を前提とした議論であり、慎重な対応が必要だ。
二項は、本会議が有効な意思決定を行うために必要な賛成の数「表決数」を定めている。過半数の原則の例外となる憲法の「特別の定」としては、(1)総議員の三分の二以上の賛成を必要とする憲法改正の発議(九六条一項)(2)出席議員の三分の二以上を必要とする議員の除名(五八条二項)−など五つがある。