逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第58条> 議会の秩序守る規則

両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
両議院は、各々その会議その他の手続および内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

衆参両院の自律権を定めた条文で、これに基づいて両院はそれぞれ規則を持っている。衆院は二百五十八条、参院は二百五十四条に及び、「召集日の午前十時に集会しなければならない」「すべて発言は演壇でしなければならない」など、会議の進め方や法案提出の手続きなどを細かく定めている。
特に衆院規則の「秩序」、参院規則の「紀律」と題した一節には、「議事中は、参考のためにするものを除いて新聞、書籍などを閲読してはならない」「議事中は、騒いで他人の演説を妨げてはならない」などの決まりがある。これらが厳しく運用されれば、規則違反に問われる議員が続出するかもしれない。
議長は、規則を逸脱して国会内の秩序を乱したと判断した議員を、懲罰委員会に付託する。懲罰の種類は国会法で、軽い順に(1)戒告(2)陳謝(3)一定期間の登院停止(4)除名−の四段階が定められている。
五五条で規定されている「資格争訟」は、その議員が被選挙権などの資格を満たしているかを審査するが、懲罰は国会内での言動が議員として適切かどうかを判断する。
懲罰で記憶に新しいのは、保守党(当時)の松浪健四郎衆院議員による「水掛け事件」。二〇〇〇年、衆院本会議で内閣不信任決議案の反対討論中、松浪氏はやじに激怒し、野党席に向かってコップの水をまいた。松浪氏は退場になり、懲罰委員会で審査した結果、登院停止二十五日間の処分が下された。
最も重い除名は、議員の身分をはく奪される。今の憲法下では、一九五〇年と五一年に衆参で各一人が除名されて以降、五十年以上も適用された例はない。