逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第66条> 9条に合わせ『文民』挿入

内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣およびその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

この条文は、実は制定の最終局面で修正が加わった。九条の修正に伴う「玉突き」の形で、修正が実現したのだ。
「芦田修正」は、ご記憶だろうか。九条を紹介した二月十二日付で紹介したので詳しくは触れないが、憲法制定に向けた衆院憲法改正小委員会で、芦田均委員長の提案によって行われた九条の文言修正のこと。この修正の結果、自衛のための戦力保持が可能になったとも解釈されている。
この直後、連合国の極東委員会からの要求がきっかけとなり、六六条二項に、首相や閣僚が文民でなければならないという「文民条項」が挿入されることになった。
本来、九条で戦力の不保持を宣言した憲法なら、わざわざ「文民」などと規定する必要はなかったようにも思える。それをあえてねじ込まれたのは、日本が近い将来、再軍備することを国際社会は感じ取っていたのだろう。
その“予感”はある意味で的中し、今は首相自身が「軍隊」と言ってはばからない自衛隊が内外で活動している。
さて、「文民」の定義とは何だろう。「文民条項」に抵触して首相や閣僚になれない者について、学説では(1)職業軍人や現役自衛官(2)職業軍人の経歴を持つ者と現役自衛官(3)職業軍人自衛官の経歴を持つ者(4)職業軍人の経歴を持ち、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられる者と、現職自衛官―の見解に分かれている。
政府は(4)の立場を採っていて、一九七三年の第二次田中改造内閣では、職業軍人出身者二人が入閣。最近では、二〇〇一年、陸上自衛隊出身の中谷元氏が防衛庁長官に就任した。しかし、仮に(3)の解釈に立てば、三人の入閣は違憲ということになる。
ちなみに、二十九人に上る戦前の首相のうち、山県有朋東条英機ら十四人が職業軍人出身。これが、政府内で軍部の発言力が強まる結果を招いたことは、よく指摘されている。