逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第69条> 解散権の制限めぐり議論

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

衆院解散の要件を規定しているのは、この条文だけ。素直に読むと、内閣不信任決議案の可決、信任決議案の否決時にしか解散できないように解釈できる。
ただ実際は、歴代首相が有利な時期を選んで解散している。これは、天皇の国事行為として行われる解散が「内閣の助言と承認」に基づくと七条に規定されていることで、首相が実質的な解散権を持つと解釈されているからだ。
内閣不信任決議案の可決によって解散されたのは、一九四八年、五三年、八〇年、九三年の四回。ただし、解散詔書は、四八年の時に「六九条及び七条により」と書かれたが、それ以外は「七条により」とだけ書かれた。
理由が首相の政治判断であろうと、不信任決議案の可決であろうと、解散は国事行為として、「七条」に基づいて行われるという考えが定着してきたといえる。
今、小泉首相は、郵政政局の展開次第では解散を断行する可能性をちらつかせる。郵政民営化反対派からは批判の声が上がっているが、自民党憲法起草委員会の議論でも「今の解散は政争の具となりすぎている。制限的に考えるべきだ」との意見が出た。
このため、同委小委員会の要綱は、現行のように首相の政治判断に基づく解散を認めるという意見とともに、「六九条に基づく解散および本予算案や重要法案が成立しなかった場合」に限定すべきだという意見も併記された。
一方、中曽根試案は、首相の解散権を明記。不信任決議案が可決された時は、総辞職の選択肢をなくし、「解散しなければならない」とした。首相を代えるには、総選挙で民意を問う必要があると考えたのだ。
内閣不信任決議案は、衆院にしか提出できないが、参院にも首相や閣僚の政治責任を問う問責決議案がある。問責決議案は、可決しても法的拘束力はない。ただ、九八年、当時の額賀福志郎防衛庁長官は問責決議可決を受け、辞任に追い込まれており、政治的インパクトを与える効果はある。