逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第85条> 特別会計に監視の抜け道

国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

国の収入・支出は、国会がコントロールするという「財政立憲主義」に基づいて、お金の支出が国民の代表である国会の承認を必要とすることを八五条で具体的に示している。八四条では、税金の徴収について国会の承認が必要だと規定しているので、これによって国のお金の「入り」と「出」が国会に監視されていることになる。
「国費の支出」とは、国のさまざまな需要を満たすための金銭の支払い。「支払い」を行う際には、そのための予算を国会が承認していなければならない。同条は、国が債務を負うときも、国会の承認が必要だと明記している。国の「借金」は、いずれ国費の「支出」で穴埋めされるため、支出と同じように国会の承認を必要とした。
債務の場合は、予算だけでなく、法律の形で国会の承認を受けることもある。
この条の規定により、国の財布は一円単位の支出までガラス張りになっているはずだ。ところが、それはあくまで建前。
本年度の国の予算は現在、一般会計で約八十二兆円あるが、約五十兆円は特別会計に繰り入れられている。しかも、特別会計は独自の財源を持っているので、一般会計の五倍近い計約四百兆円に膨れ上がっている。
おまけに予算の査定も甘く、国会のチェックもあいまいなので、放漫財政に陥りやすい。社会保険庁グリーンピアなどの福祉施設に無駄なお金を垂れ流していたことは記憶に新しいが、使われたお金は三十一ある特別会計の中の一つ、「国民年金特別会計」だった。
こうした現状は、八五条の精神から逸脱しているとさえ思える。
塩川正十郎財務相は在任中、「母屋(本会計)でおかゆを食って、離れ座敷(特別会計)でスキヤキを食っておる」と評したことがある。
特別会計以外にも、「第二の予算」といわれる財政投融資も、使い道が把握しづらいと指摘されている。こうした支出の透明性を高め、議会のチェックを強化する必要があるのはいうまでもない。