逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第86条> 予算の無駄遣い防げるか

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

予算は、四月から翌年の三月末までの一会計年度における国の歳入と歳出の計画。予算に従って国の財政が運用され、行政が行われる。
社会保障であれ、公共工事であれ、あらゆる行政は、予算の裏付けがあって初めて実現することになる。その意味で、予算は国民生活に密接にかかわっている。
政府は十二月下旬に翌年度の予算案を閣議決定し、一月から始まる通常国会に提出。そこから国会で審議される。
予算は、その年度が始まるまでに成立していることが望ましい。本年度予算の成立は三月二十三日で、三月中の成立は七年連続だ。年度内成立しない場合は、空白期間をつなぐための暫定予算が組まれる。
条文に「毎会計年度」とあるように、日本では単年度予算主義が採られている。つまり、予算は一年ずつ切り離してつくるという考えだ。
これに対し、複数年度にまたがる予算をつくれるように、憲法で規定すべきだという意見が、衆院憲法調査会で出た。
複数年度派は「単年度予算は、予算を年度内に使い切ろうとして、不必要な物品購入や工事などの無駄遣いを引き起こす」と弊害を指摘する。年度末の三月になると、道路工事が目立つのも、単年度主義の弊害といわれる。
このほか、単年度予算は(1)前年踏襲型で硬直的になる(2)中長期的な視野に立った編成が難しい−などの問題点が指摘される。
しかし、複数年度予算にも問題はある。
「単年度派」は、「複数年度予算は、年度の歳出と歳入を対応させた財政運営とならず、国会のチェック機能が弱まる」と主張する。実際、複数年度予算が部分的に認められていた旧憲法下では、国会の監視があいまいになり、結果として、戦費に乱用されたという反省がある。