逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第88条> 『三種の神器』は私有財産

すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

皇室の「家計」に関する原則を定めた条文。皇室予算も、財政の処理は国会で決めるという「財政立憲主義」の例外ではないことを規定している。
皇室経済法は、国が支出する皇室費を、(1)天皇と内廷皇族の生活費となる内廷費(2)外国訪問などの公的行事に使われる宮廷費(3)各宮家への皇族費−に区分している。内廷費皇族費は私的なものに使われ、宮廷費は公的な目的に支出される。
紀宮さまは今、内廷皇族の一員なので内廷費で、秋篠宮さまのご家族は「各宮家」として皇族費で生活されている。紀宮さまは今秋、ご結婚により皇族の身分を離れるので、内廷費で生活する対象からは外れる。
二〇〇五年度予算の皇室費六十八億七千百五十万円のうち、内廷費は三億二千四百万円。この十年間、変わっていない。紀宮さまのご結婚に伴い、一億五千二百五十万円を限度とした一時金が支給されるが、これは皇族費だ。
私的な内廷費と、公的な性格を持つ宮廷費を区別する基準は明確ではなく、使途をめぐって度々議論となった。
一九九〇年に行われた天皇陛下の「即位の礼」と「大嘗祭(だいじょうさい)」のうち、宗教色の強い大嘗祭の経費を宮廷費から支出した。「大嘗祭は公的性格があり、費用を宮廷費から支出することが相当」というのが政府の見解だったが、憲法政教分離原則に反するとの指摘もあった。
この条文は、皇室財産の国有化も規定している。皇居や御用邸京都御所、奈良の正倉院、陵墓などは、国有の「皇室用財産」だ。
だが、実際には株などの私有財産も存在し、天皇陛下昭和天皇の遺産相続によって、相続税を支払われている。皇居内でも、祭祀(さいし)を行う「宮中三殿」は国有ではない。そして、草薙の剣などで知られる「三種の神器」も、天皇家私有財産と解釈されている。