逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第90条> 権限弱い会計検査院

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
会計検査院の組織および権限は、法律でこれを定める。

国の予算の内容と執行状況を、会計検査院がチェックすることを規定した条文。検査院は内閣から独立した組織で、中央省庁などの会計経理も監督する。
しかし、検査院の検査能力については、不十分だとの指摘がある。強制権限がないのに加え、検査官が三人しかいないという問題もある。
この結果、犯罪・不正行為の発見は不可能に近い。最近、社会保険庁の不正支出が次々に発覚したが、大半は司法機関の捜査や国会質疑で判明した。検査院の出番は、ほとんどなかった。
また、現在の規定は検査内容を国会に報告するだけで、次年度以降の予算は拘束しないため、国会は報告を受けても、改める義務がない。
国会では、検査院の権限強化が、しばしば議論される。参院憲法調査会では「検査院の報告を受け、国会は内閣に勧告を行い、首相は必要な措置を取る」と、憲法に明記すべきだという意見が出た。
こうした議論が、参院側から多く出ているのには理由がある。
参院は「衆院カーボンコピーだ」として、不要論にさらされている。その批判をかわすため、参院側は両院の役割分担を主張。その中の有力な意見が、「衆院は予算審議、参院は決算審議を中心にして、会計検査院参院に付属させる」という案だった。つまり、参院から出る「検査院の強化」論は、自分たちの生き残り策の要素もあるのだ。
八日、参院は二〇〇三年度決算を是認したが、その際、特別会計の見直しなど、内閣に対する十二項目の警告決議を行った。これは、「決算重視」を自負する参院の自己主張といえる。
しかし、検査院を参院に付属させることについては、独立性確保の観点から、消極論も根強い。結局、四月に発表された参院憲法調査会の調査報告書は、「会計検査院参院に付属させるか否かは意見が分かれた」となった。