逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第91条> 形骸化が進む財政報告

内閣は、国会および国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

八三条から始まった「財政」の章を締めくくる条文。これまでは、国会や会計検査院が国の財政をチェックする条項が続いていた。この条は、国会だけでなく、国民が直接、財政をチェックできるようにするため、内閣が国の財政状況についての資料報告を義務付けている。
予算は、会計年度ごとに一年ずつ切り離して編成される単年度予算主義が採られているため、報告も一年に一回は行うよう求めている。この規定に従い、財政法四六条は、予算が成立後、直ちに予算と前々年度の決算、国債などの残高を印刷物などで国民に公表することを定めている。
二〇〇五年度予算や〇三年度決算について説明した「国民への財政報告」は、今月三日に公表された。報告は、官報や財務省のホームページなどで見ることができる。
三日発行の官報の「報告」部分は、A4判で三十一ページ。約八十二兆円の〇五年度一般会計予算に関する編成の基本的考え方や、重要施策などが記載されている。お役所言葉と表の羅列という印象が強く、「国民に読んでもらおう」という内閣の思いを感じ取るのは難しい。
財務省のホームページでは、「予算・決算」という項目の中に「国民への財政報告」がある。ただ、数多くある資料の中の一つとして紛れ込んでいる印象が強く、憲法に定められた重要な資料には見えない。
こうした現状を踏まえ、衆院憲法調査会の議論では、民主党鹿野道彦氏が「情報提供はもっと分かりやすい言葉、文言を明記して、国民が今日の状況にもっと痛みを感じるようにすることが大事だ」と、報告制度の形骸(けいがい)化に苦言を呈した。