逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第93条> 『二元代表』機能生かせず

地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

国民は国会議員を選べるが、国会議員の投票で決まる首相は、直接選ぶことはできない。これに対し、地方では、住民は各自治体の議員と、知事・市長などの首長の両方を選挙で選ぶことができる。
憲法下では、知事の人事権は内務大臣が持つなど、自治体の長は「官選」だった。これが直接選挙制になったことで、自治への「民意反映度」は飛躍的に増した。
戦後、最初の知事選は、憲法が施行される直前の一九四七年四月五日、全国一斉に行われた。平均投票率は71・85%。同年に行われた衆院選投票率が67・95%だったことと比較すると、民意に基づいた首長選びを国民が待ち望んでいたことが伝わってくる。
直接選ばれる首長は一見、米国の大統領のようだ。最近、マニフェストを掲げて当選した改革派首長たちが、先進的な政策を次々に打ち出して実行しているのも、首長が大統領と同じように、選挙によって直接契約をしているからだ。
日本の地方政治は、このような大統領選的要素に加え、(1)議会が首長の不信任決議をすることができる(2)首長が議会を解散できる―など、議会制民主主義的な要素も取り入れている。ともに民意を反映した議会と首長が、監視・けん制する仕組みを「二元代表制」という。
ただ、民主党中川正春氏は衆院憲法調査会で、「今の(地方)議会はただの承認機関のようだ」と指摘した。確かに、議会に予算議決権があるといっても、実際の予算編成は首長側が行っているし、政省令に縛られて独自の条例作りにも限界がある。二元代表制が十分に機能しているとは言い難い。
中川氏は、「大統領制のような仕組み」「議院内閣制」「議会代表と首長による合議で自治体の運営を進める方法」などの中から、各自治体が自由に選べるようにしてはどうか、と提言している。