逐条点検 日本国憲法(東京新聞)

暮らしそのもの『国の基本』全103条


<第94条> 条例制定権の拡充必要

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

地方自治体に対し、行政、立法を行う権利を保障した条文。
行政権に関しては、国と地方の税財政を見直す「三位一体改革」を通じた地方分権の取り組みが注目を集めているが、立法権、つまり条例制定権についても、変革を求める声が出ている。
地方自治体の立法権は現在、この条文で地方議会が条例を制定することなどを認めている。東京都千代田区、品川区などが、罰則付き路上禁煙条例を定めて愛煙家の権利を制限できるのも、この条文があればこそだ。
ただし、どんな条例を作ってもいいわけではない。「法律の範囲内」という「たが」がはめられている。だから、どこかの市が「万引をしたら小学生でも死刑」などというような、法律の枠をはるかに超える条例を作ることはできない。
公害対策などでは、国の法律より厳しい規制を設ける「上乗せ条例」が認められてきた。これは、厳密にいうと「法律の範囲外」となるが、あくまで例外的な措置だ。
この原則を変えようという意見が、最近の憲法改正論議ではよく出ている。
四月に発表された衆院憲法調査会の最終報告書では、「地方公共団体の専属的、あるいは優先的な立法権限を憲法で保障する必要がある」などと明記。地方自治体が責任を持って行政を行う分野では、国の法律の縛りを受けない独自の立法権を、自治体に与えるべきだとの意見を紹介している。
ただ、その大前提として、立法機関としての地方議会の能力を高める必要があるのではないか。
今の地方議会には、戦後、議員提出条例案が一本も出たことがないようなところがたくさんある。こんな状態が続いたら、仮に憲法が改正されて自治体の立法権が幅広く認められても、「宝の持ち腐れ」になってしまうだろう。