どこが違う 自民党憲法草案「▼5 <統治>『解散権』首相の手に」(東京新聞)

憲法草案は、首相の権限の強化を打ち出しているのが特徴だ。
憲法は、六五条で「行政権は、内閣に属する」と記している。これに対し、草案は「行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する」と規定。「特別の定め」として、首相に(1)衆院の解散(2)行政各部の指揮監督、総合調整(3)自衛軍の指揮―を行う権限を与えた。
最も注目されるのは、首相に解散権があるのを明記したこと。現憲法は七条で「内閣の助言と承認」により、天皇が解散を行うとしており、首相の解散権は、事実上のものとの解釈だ。歴代首相はこれに基づき、自身に有利に働くよう解散を行ってきた。しかし、明文規定がないのに、解散が首相の専権事項として扱われることには異論もつきまとう。
小泉首相は、先の通常国会郵政民営化関連法案が参院で否決されたことを理由に衆院を解散。反対派から「独裁者だ」との批判が続出した。草案はこうした問題の決着を図ろうとしている。
しかし、現憲法より首相が解散をしやすくする規定には「解散権の乱用につながるのではないか」との危惧(きぐ)が強まるだろう。
一方、草案は、国会の構成について、現行の衆参二院制をそのまま維持することとした。これは昨年十一月、党憲法調査会改憲草案起草委員会(旧起草委)が「参院議員の閣僚兼任禁止」など、衆院の優越性を強化する素案をまとめたのに参院側が強く反発したことが大きく影響している。
素案は白紙撤回となった上に、旧起草委は解散に追いやられた。その後発足したのが、小泉首相をトップとする新憲法制定推進本部。本部内に設けられた新たな起草委は、参院側を再び刺激して草案のとりまとめが難しくなるのを嫌い、「二院制維持」を前提に議論を進めてきた。
しかし、今の二院制の在り方に疑問を挟む声は少なくない。
先の特別国会での郵政民営化関連法案採決では、衆院選で与党が圧勝したことを受け、民営化に反対だった参院議員たちが雪崩をうって賛成に回った。この判断の是非はともかく、参院の独自性が大きく揺らいでいることを象徴する出来事となった。
統治関連の条項では、二大政党制の定着を受け、政党政治を強化するため、六四条に「政党条項」を新設したことは評価されるだろう。