県の姿勢に現場戸惑い(asahi.com / 2006年4月1日)

県の男女共同参画施策の見直しやその是非をめぐる議論が活発化している。3月の県議会では、上田清司知事が答弁で、児童・生徒を男女別にせず50音順で並べる男女混合名簿に疑問を呈した。戸田市の保護者向け性教育講座の講師の人選について、県教育局が市教委に改善を求めたことも明らかになった。こうした県の姿勢には、現場から疑問や戸惑いの声もあがっている。
「ひな人形、武者人形はいけないとか、男女共同参画名簿もそういう視点で出されたものだと思う。(導入して)わざわざ現場を混乱させなくていい」
県議会予算特別委員会で、上田知事は吉田弘県議(自民)の質問にこう答えた。その後の知事定例会見でも「混乱するなら無理に導入することはない」と述べた。
男女混合名簿は、02年に策定された県の男女共同参画推進プランで普及が掲げられた。現在は県内の公立学校の7割以上で導入されている。
発言に対し、埼玉教職員組合は「県の男女共同参画推進を否定する発言で、説明責任がある」とする文書を知事に提出した。
委員会で吉田県議は、「過激な性教育」にも言及した。自民党の「過激な性教育ジェンダーフリー教育の調査結果」をもとに「戸田市が主催する子育て講座で、頻繁に特定の団体の代表が講師となり、小学1年生から性器の呼称を教えようなどと話している」と指摘した。
稲葉喜徳教育長は「市教委に改善を要請し、適切な性教育の推進に努めたいとの回答を得た」と答弁した。同局健康教育課の担当者が2月下旬、戸田市に電話で「今後は講師の人選を慎重に検討してほしい」と求めたという。
しかし、市生涯学習課によると、性教育を扱う講座を開いたのは昨年6月の1度だけで、受講者のアンケートも好意的な意見が多かったという。担当した職員は「これでは、様々な意見のあるテーマについて講師を呼ぶことに臆病になってしまう」と、困惑気味だ。
講師を務めた民間団体「人間と性 教育研究協議会」の村瀬幸浩代表幹事は「講座は学校教育でなく、保護者向けに家庭の性教育を扱った。批判は筋違いだ」と話す。
県の推進プランは現在、有識者による審議会で見直しに向けた検討が進んでいる。6月下旬には知事に中間案を提出する予定だ。
「性差」や「性役割」の教え方と併せて「行きすぎた性教育」が批判される中、県が過敏になることを心配する関係者もいる。3月23日の審議会では、委員の1人が「行き過ぎた性教育への批判が、男女共同参画推進全体への批判につながらないでほしい」と意見を述べた。