室井佑月「私と愛国(6) - 心教えるのは親の役目 命与えられた事に感謝」(朝日新聞2006年5月30日(火)夕刊)

国を愛することって、法律で押しつけられるものではないと思う。心の問題は答えが一つしかないものではないし、小説のテーマになるようなものだから、教科書にちょっと書くぐらいで伝わるとは思えない。そんな大切なことを子どもに伝えるのは子どもを一番愛してる親の役目だと思う。
学校は勉強する所だというのが私の認識だから、人間として一番大切な「心の問題」に踏み込んで欲しくはない。それは子どもたちの個々の問題で、画一的なものではないのだから。私自身、学校で尊敬できる先生と出会ったことがなかったので、先生に対して全幅の信頼感があるわけではない。先生も一人の未熟な人間だから、期待をしすぎちゃいけないよね。
国を愛するというのは、自分の命を与えられたことに感謝することだと思う。日本に生まれて飢えたこともない、外に出ると危険だということもない。そのラッキーな私が存在できるのは、親や先祖が地盤を作ってくれたから。
今の日本人が個人主義だというのはわかるし、みんなの中の一人という教育が必要なのもわかる。でも、「愛国心を教える」なんて決めた人は本当に国民を馬鹿にしている。「こうだって提示してやれば、そうだって思うだろ」くらいに思ってるんじゃないかな。社会の格差拡大や消費税が上がるといった、国に対する不平不満をそらし、自衛隊を「派遣」ではなく今度は「派兵」する準備に使おうとする気もする。やばいよ。
愛国心って、野球やサッカーのワールドカップで日本を熱狂的に応援して、心がキュッてなる。そんな愛でいいと思う。