1年も経たずに4人目の閣僚辞任

赤城農相辞任:事務所費問題などで引責 若林環境相が兼務(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年8月1日(水))

赤城徳彦農相(衆院茨城1区)は1日、首相官邸安倍晋三首相をたずね、政治団体の事務所費をめぐる問題や参院選惨敗に影響した責任を取り辞表を提出、首相もこれを受理した。事務所費など不自然な支出を指摘され続けながら、潔白を証明する領収書の公表を拒み続けた赤城氏だが、参院選での自民惨敗の要因となり与党からも辞任論が出ており、首相も事実上の更迭を判断したとみられる。安倍政権下での閣僚の交代は、自殺した松岡利勝前農相も含め、4人目。赤城氏を擁護して参院選を戦った首相にとって後手に回った形での辞任は打撃であり、大きな失点となった。
赤城氏は首相官邸で記者団に辞任の理由について「(自分のことが)選挙戦に影響を与え、与党の敗北の一因となったことはまぎれもない事実で、大変申し訳なく思う」と語った。塩崎恭久官房長官は1日午前の記者会見で「安倍首相が赤城農相を首相官邸に呼んだということだ」と述べ、首相が事実上、農相を更迭したことを明らかにした。関係者によると、農相の新たな疑惑が一部で報じられたことを重視したという。首相は31日、9月に行う内閣改造人事では農相を留任させない意向を明言していた。農相は、やはり「政治とカネ」をめぐる問題で批判を浴びて5月28日に自殺した松岡前農相の後任として、6月1日に就任したばかり。安倍内閣は昨年9月の発足から約10カ月で、閣僚の辞任は3人目、交代は4人目の極めて異例な事態となる。当面、若林正俊環境相が兼務する見通しだ。
赤城氏を巡っては、「赤城徳彦後援会」が、茨城県筑西市の父親の自宅を団体の所在地として届け、05年までの10年間に、事務所費を含め約9045万円に上る経常経費を計上していたことが発覚。また、東京・世田谷の妻の実家に事務所を置く政治団体「徳政会」も、衆院議員に初当選以降17年間、毎年100万円以上の経常経費を計上していた。
後援会の実態について、代表者になっている前茨城県議は当初、「今は(事務所として)使っていない。私が代表として名前を使われていることは一切知らなかった」とし、また父親の毅彦氏も「(ここで政治活動は)やっていない」とそれぞれ事務所に実体がなかったことを毎日新聞の取材に認めていた。
しかし、その後になって両者は「事務所としての活動が以前ほど活発ではないという趣旨」などと前言を翻し、赤城氏自身も、釈明会見などで「公私混同や経費の付け替え、架空経費は一切ない」と潔白を主張。しかし、それを証明する領収書の公表については「政治資金規正法のルールに基づいて、適正に処理し、公表すべきものは公表している」と語り、法律を盾に拒んできた。



赤城農相辞任:辞表提出後の発言 「けじめつけたい」(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年8月1日(水))

赤城徳彦農相が1日、安倍晋三首相への辞表提出後、首相官邸で記者団に語った発言は次の通り。
−−安倍首相とはどんな話をしたのか。
ただいま総理にお会いをいたしました。私から国務大臣の職を辞したいとお願いをいたしました。
−−首相から慰留はあったか。
総理からも「分かりました」ということでした。
−−今日、辞表提出した理由は。
これまで今般の参院選において私に関するさまざまな報道等ありました。そのことで選挙戦に影響を与え、与党の敗北の一因となったということは、まぎれもない事実だと思っております。大変申し訳なく思っております。そうしたこともありまして、この際けじめをつけたいと思いました。
−−首相が「赤城農相を含め人心一新を」と発言した。その言葉も辞任に影響しているのか。
いろいろなことをこの間、私も考えてまいりました。選挙戦で多くの同志、有為な方が無念の涙をのんだという結果に対しても大変残念であります。さまざまな思いの中で、この際、私は職を辞することでけじめをつけたいと思っております。
−−領収書を公開し事務所費問題で改めて説明する考えはないか。
これからですね、党に対して「規約を作るように」ということで首相から指示がありましたので、その規約、決まりに沿って対応してまいりたいと思っております。
−−領収書も含めて公開する考えか。
規約に沿って対応をいたしますが、今、総理とお会いしたばかりですので、また改めて午後になると思いますが、会見の場を設けさせていただきたいと思います。
−−辞任を決めたのはいつか。
そのことも含めて、改めて会見の場で申し上げさせていただきます。
−−首相に呼ばれたということか。
ちょっともう、このくらいにさせていただいて……。



赤城農相辞任:批判浴び孤立 口調淡々、目潤ませ(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年8月1日(水))

「政治とカネ」の問題で、また安倍内閣の閣僚が辞任に追い込まれた。1日、辞表を提出した赤城徳彦農相。「ナントカ還元水」問題に揺れ、自殺した松岡利勝前農相の後を受けて初入閣しながら、当初から政治資金を巡るさまざまな疑惑が発覚。その都度「法律にのっとっている」と繰り返すだけで説明を拒否してきた。ある時は、顔にばんそうこうを張った理由も言わなかった。結局は参院選での歴史的惨敗を受け、持ちこたえられずに更迭となった。
「選挙戦に影響を与え、与党敗北の一因となったことはまぎれもない事実。大変申し訳なく思っております」。1日午前、首相官邸前。安倍晋三首相に辞表を提出した後、赤城農相は理由について、こう語った。口調は淡々としているが、目はやや充血し、潤んでいた。
松岡氏の後任として「政治とカネの問題も考慮して」(政府関係者)農相に選ばれながら、赤城氏は同じ問題で、さまざまな問題が噴出した。
まず発覚したのは、赤城氏が代表を務める自民党茨城県第1選挙区支部が03年11月、農水省所管の社団法人中央酪農会議から10万円、全国農業協同組合連合会(JA全農)から10万円の献金を受けたというもの。JA全農からは05年9月にも10万円の献金を受けている。2法人とも1年以内に国の補助金を交付された団体で、政治資金規正法で政治活動への寄付が禁じられていた。
さらに、資金管理団体「徳友会」の事務所費支出が、19万円から1000万円超と、年によって大きく変動していることが判明した。家賃のかからない議員会館に事務所を置いているにもかかわらずだ。
そして、茨城の実家に事務所を置いた形の赤城徳彦後援会事務所費問題。政治資金収支報告書によると「後援会」は家賃などに当たる事務所費だけで10年で約1631万円。このほか、同じく10年間に▽人件費約5353万円▽光熱水費約794万円▽備品消耗費約1266万円を計上していたが、事務所としての活動実態は限りなく「ゼロ」に近いとされた。
こうした問題は、世界貿易機関WTO)交渉のため、7月10日にジュネーブに向かった後も、報道陣に追いかけられ、釈明しなければならなかった。
7月21日には、関連政治団体「つくば政策研究会」(04年に解散)が97年以降の7年間、すでに東京都港区西新橋のオフィスビルから退去していたにもかかわらず、政治資金収支報告書には、この場所に事務所が実在するように記載し、事務所費など計1215万円の経常経費を計上していたことが毎日新聞の報道で発覚。農相は「会計責任者が異動届を怠った」と釈明した。
同月26日には「赤城徳彦後援会」と「自民党茨城県第1選挙区支部」の03年分の収支報告書に、郵送代19万6085円を政治活動費として二重計上していたことも発覚。農相は「事務処理上のミス」と強調したが、既にその言葉は信頼を失っていた。
ほおと額に大きなばんそうこうを付けて7月17日の閣議後会見に臨み、その理由説明をしなかったことも批判の対象に。「選挙戦に響いた」という声が、党内からも相次ぐほど孤立していた。
赤城氏は着任会見で「政治とカネ」について「私は常々、秘書、事務所の者には、資金の問題とかきちっと処理するようにと言っております。法律・制度がありますので、それにのっとってきちんとやっておりますということは、報告を受けております」と述べていた。
赤城氏は農水省OB。90年に30歳で初当選して当選6回。昨年9月の自民党総裁選で安倍首相の推薦人に名を連ねるなど、安倍総裁誕生を支えた。04年には衆院に新設された「北朝鮮による拉致問題特別委員会」の初代委員長に就任した。
祖父、故宗徳氏は安倍首相の祖父、故岸信介元首相の側近で、農相などを務めた。



与党内、大半が「当然だ」 赤城農水相更迭(asahi.com 2007年8月1日(水))

赤城農林水産相が事実上更迭されたことに対し、与党内は大半が「当然だ」と受け止めた。さらに、赤城氏の問題が参院選自民惨敗の大きな要因の一つだったとみて、赤城氏や首相側の判断を「遅い」と批判する意見も出ている。一方、野党側は首相の任命責任を問い、退陣を求めた。
自民党中川秀直幹事長は1日午前の記者会見で「もう少し早いタイミングで、という意見は党内に相当多くある。新しい内閣では二度と起きないよう、内閣改造にあたっては政治とカネの透明性を基礎的条件にと思っている」と語った。
公明党北側一雄幹事長も「十分な説明責任を果たしていないし、参院選敗北の一つの大きな要因になったことは間違いない。ぜひ説明してほしかった」と述べた。さらに、舛添要一自民党参院政審会長は「論外だ。官邸の危機管理能力が問われる。今頃辞任しても何の意味もない。立て直しを図るときにプラスにならない」と述べた。
一方、民主党高木義明国対委員長は「閣僚としての説明責任を果たしていない。安倍首相の任命責任が問われる。退陣を求めたい」と述べた。共産党市田忠義書記局長も「任命し、かばいつづけた安倍首相の責任は重い。選挙の審判を受けて安倍内閣は退陣すべきだ」と述べた。社民党又市征治幹事長は「人を次々辞めさせて、自分だけのうのうとしていますという話になるのか。総理も辞めるべきだ」。国民新党亀井久興幹事長は「先延ばしした総理の任命責任も問われるべきだ。説明責任は残る」と語った。



最後もお騒がせ大臣、官邸ちぐはぐ 赤城農水相更迭(asahi.com 2007年8月1日(水))

赤城農水相が1日午前辞職した。「事務所費」「ばんそうこう」「領収書コピー」と、疑惑が持ち上がるたびに詳しい説明を避けて有権者をあきれさせ、参院選での自民惨敗の一因とみられてきた。「どうせなら、投票日前に辞めておけば……」。遅きに失した「更迭」に、安倍内閣の危機管理力が改めて問われそうだ。
「本人も参院選の責任をずっと感じていた。昨晩には辞任を決めていたようだった」。赤城氏の事務所関係者はそう明かした。
その赤城氏は、辞任後、首相官邸で記者にもみくちゃにされ、質問が飛び交う中で、淡々とした表情で立ち止まり質問に答えた。
今回の参院選自民党が歴史的な惨敗を喫したことについて「敗北の一因となったのは紛れもない事実。大変、申し訳なく思っております。けじめをつけたい」。詳細な説明を拒んできた事務所費問題が、大敗の大きな要素となったことをはっきりとした口調であっさりと認めた。
また、事務所費問題が浮上してから出処進退を問われ続けてきたが、赤城氏は「いろいろなことを考えてまいりました」としたうえで、「選挙戦で多くの同志が無念の涙をのんだ。さまざまな思いの中で、この際、私は職を辞する中でけじめをつけさせていただきたい」と語った。
「更迭ですか」。記者からの質問について、一瞬の間をおき、「私から職を辞したいとお願いした。総理からも『分かりました』ということでした」と赤らんだ目で一点を見つめ、自らの判断だったことを強調した。
「今後、領収書は明らかにするつもりはあるのか」。記者からの説明責任についての質問には、「もうこれぐらいにしてもらえませんか」と遮り、「詳しくは午後に会見の場を設け、そこで説明したい」と報道陣を押しのけて官邸をあとにした。
赤城氏は1日午前10時すぎ、東京・赤坂の議員宿舎を出る際には、記者団に対し「任期の間は全力でやっていきたい」「進退は首相の判断次第」として、自ら辞任することについては否定していた。
不明朗な事務所費問題。顔にガーゼやばんそうこうをつけながら、その症状についての説明を拒否――。赤城氏をめぐっては、あいまいな姿勢が繰り返し報道されていた。
午後1時半前に農水省に入った赤城氏は、「なぜこの時期に」という記者団の質問に、まっすぐ前を向き硬い表情で何も答えず、足早にエレベーターに乗り込んだ。