領収書「紛失した」はゴマカシに他ならない

政治資金:領収書添付、紛失申告で“免罪” 鴨下環境相側も148万円分(毎日新聞 2007年9月9日(日))

政治団体政治資金収支報告書へ添付を義務づけられている領収書について、「紛失した」と申告すれば添付せずに済む実態のあることが分かった。鴨下一郎環境相衆院東京13区)の政治団体では約148万円分の領収書が「紛失」を理由に添付されなかったケースがあり、こうした状態を問題視した東京都選挙管理委員会は今年、政治団体に配布した手引書の記載例から「紛失」の言葉を削除した。一般の常識では考えられないずさんさが政治資金では許されている。
政治資金規正法は、5万円を超える政治活動費を支出した場合、領収書の写しを収支報告書に添付することを義務づけている。しかし、それが難しい場合、代わりに支出目的や金額、日時などを記した「領収書等を徴(ちょう)し難かった支出の明細書」を添付することとしている。「徴し難い」場合とは、銀行振り込みや交通費を主に想定しているが、明確な規定はないため、「紛失した」と主張すれば許される。
下環境相が代表を務める自民党東京都第13選挙区支部(東京都足立区)の03年分収支報告書によると、「案内状印刷」として同年8月6日に45万7233円と12月3日に22万9341円▽「機関紙の印刷」として2月24日に80万1833円−−の計148万8407円を支出したが、領収書はなく、徴し難かった事情として「紛失のため」と書かれていた。
鴨下氏の事務所は「紛失は事実だが、詳しい経緯などは調査中。領収書がなくても、支出があったのだから報告書に記載しないわけにはいかない」と話した。


◇都選管、手引書に記載
支部を所管する都選管によれば、鴨下環境相の例に限らず「紛失」を理由として領収書が添付されない例は毎年何件かあり、慣行として認められてきたという。担当者は「紛失自体とんでもないこと」としながらも、「(紛失を理由にした)明細書を拒む理由も権限もない。内容は真実だと宣誓されており、それを信じるだけ」と話す。都選管が発行する手引書では明細書の記載例に「紛失」もあったが、内部で問題視され、現在は削除した。
総務省政治資金課は「収支報告の制度は、もともと領収書の紛失を想定していない」としている。【加藤隆寛】


◇いいかげんさ、正す仕組みを−−岩井奉信・日本大教授(政治学)の話
「なくした」で済むなんて、そんなにお気楽な話があるか。「何でもあり」になってしまう。政治活動の自由を建前に、政治資金にはあまり厳しい外部機関のチェックはされてこなかった。報告書のいいかげんさが分かってしまった今、国民がきちんとチェックできる仕組みの整備が急務だ。



伊吹派団体でも記載漏れ パーティー券代金50万円(東京新聞 2007年9月10日(月))

伊吹文明文部科学相の派閥の政治団体志帥会」(東京)が、政治資金収支報告書に2005年に開催したパーティーの収入50万円を記載していなかったことが10日までに分かった。
パーティー券を購入したのは06年末に解散した「新政治問題研究会」(東京)。志帥会亀井静香衆院議員が派閥代表だった05年4月、東京都内で「めざせ新しい日本」と題した政治資金パーティーを開催した。
新政治問題研究会の収支報告書によると、パーティー券購入費として計50万円を支出しているが、志帥会の収支報告書には記載がなかった。
志帥会事務局は「パーティー券販売は国会議員が窓口になっており、20万円を超える収入は議員からの報告を受けて記載することになっている。今回は報告もなく、購入者とも連絡が取れていない。確認作業中だ」としている。(共同)



政治資金:保坂・文部科学政務官も記載漏れ 関連団体の寄付金10万円を(毎日新聞 2007年9月9日(日))

自民党保坂武・文部科学政務官衆院山梨3区)の資金管理団体が、同氏関連の政治団体から受けた寄付金10万円を、05年の政治資金収支報告書に記載していないことが分かった。保坂氏は毎日新聞の取材に「理由は不明だが、10万円が宙に浮いている状態。申し訳ない」と記載漏れを認め、10日にも山梨県選管に修正を届け出ると話した。政務官辞任の考えはないとしている。
保坂氏によると寄付金は「陣中見舞い」として、政治団体「税理士による保坂武後援会」が衆院選さなかの05年9月3日、同氏の資金管理団体「地域政策研究会」に10万円を寄付。その際、同研究会名の領収書が発行され、同後援会も収支報告書に記載したが、同研究会の報告書には寄付を受けた記載がなかった。【吉見裕都、宇都宮裕一】



増田総務相も記載漏れ 寄付金100万円、収支合わず(中日新聞 2007年9月8日(土))

増田寛也総務相岩手県知事時代に支援していた政治団体(二〇〇六年十二月解散)が、増田氏の資金管理団体(同)に百万円を寄付したと政治資金収支報告書に記載しているのに、資金管理団体の収支報告書には受領した記載がなく、内容が食い違うことが八日、分かった。
ずさんな政治資金収支報告書の記載が相次いで指摘される中、収支報告書の公表など政治資金制度を所掌する総務省トップのミスも明らかになった。増田氏は八日正午に記者会見し、「大変なミス。管理が行き届いていなくて深く恥じている」と陳謝した。
自らの進退については「説明責任を果たして、引き続き職責を全うしたいと考えている」とし、安倍晋三首相には既に報告したという。
増田氏によると、三選を果たした〇三年四月の知事選前の〇三年二月二十八日、自分を支援する政治団体「岩手21の会」から百万円を選挙運動費用として受け取った。
この際、本来は領収書に個人名を記載すべきところを、自分の資金管理団体「夢県土いわて・21」名とその代表者として自分の名前を記載。このため、「岩手21の会」は、「夢県土いわて・21」に支出したと収支報告書に記載した。
増田氏はミスの原因について「選挙の担当者と資金管理団体の事務担当者が同じ人物で、混同して領収書を発行してしまった」と説明した。
今後、領収書の名義を変更するとともに、既に「岩手21の会」に訂正を依頼した。百万円の受領については、知事選の選挙運動費用収支報告書に記載しており、「夢県土いわて・21」の収支報告書は訂正しない。
増田氏は旧建設省キャリア官僚出身。岩手県知事を三期十二年務め、今年四月に引退。八月二十七日発足の安倍改造内閣総務相に起用された。地方・都市格差是正担当なども兼務している。