新内閣?

福田内閣:発足 再任13、横滑り2 「急場」に守り優先、麻生氏は閣外(毎日新聞 2007年9月26日(水))

◇外務・高村氏、防衛・石破氏
自民党福田康夫総裁は25日夕、国会で第91代の首相に指名された。ただちに組閣を行い、同日夜、新内閣を発足させた。26日の皇居での首相任命式、閣僚の認証式を経て正式に始動する。改造内閣が1カ月足らずで退陣、臨時国会中の組閣であることから前内閣の17人の閣僚のうち15閣僚を残留させ、急場しのぎの陣容となった。町村信孝外相の官房長官起用に伴い、外相に高村正彦防衛相、防衛相に石破茂防衛庁長官をそれぞれあて、経験・実務重視の布陣でテロ対策特措法延長問題が控える国会攻防に備えた。参院与野党勢力が逆転する中、福田政権は発足直後から厳しい政権運営を迫られそうだ。
福田首相は25日夜の記者会見で、大量の再任について「国会中で、改造の幅を広げることは、それだけ混乱を招く可能性があるかもしれない。それで必要最小限にとどめた」と説明した。
17閣僚のうち、安倍改造内閣とポストが変わらない再任は13閣僚。変動した4ポストも町村、高村両氏が横滑りで、新任閣僚は、伊吹文明自民党幹事長の後任の渡海紀三朗文部科学相と、石破氏の2人だけ。与謝野馨官房長官と伊吹氏のみ閣外に去った。新任閣僚を起用する場合、「政治とカネ」をめぐる問題などを調べる時間的余裕が無い事情もあった。
小渕恵三首相(当時)の急病に伴い00年4月に発足した森喜朗内閣が前内閣の全閣僚を再任した例がある。


◆バランス配慮
首相は「挙党一致」の立場から麻生太郎前幹事長に入閣を要請したが、麻生氏は固辞。なお調整を探る意向を示していたが結局、断念した。麻生派からの入閣はなかったが総裁選で麻生氏を支えた鳩山邦夫法相、甘利明経済産業相は再任された。
小幅人事ながら首相は挙党態勢と派閥バランスに配慮。渡海氏が属する山崎派は、同派が総裁選で福田氏を支持しながら山崎拓前副総裁が党役員人事で処遇されず、不満が出ていた。しかし、総裁選で善戦した麻生氏が「無役」を通し、首相には不安要因となった。


◆テロ特措法対応
町村氏と高村氏は安倍内閣で外相、防衛相としてテロ特措法問題にかかわった。石破氏も防衛政策に詳しく、経験を重視した。資金管理団体の借入金問題を抱える鴨下一郎環境相政治団体補助金受給問題がある若林正俊農相は再任、野党の追及材料となりそうだ。
一方、的場順三氏に代わり安倍氏と折り合いの悪かった前官房副長官の二橋正弘氏を再登板させたほか、岸田文雄特命相から「再チャレンジ」担当を外した。自民党内からはこうした姿勢に「『脱安倍』をはかる布石」(幹部)といった声が聞かれる。【中田卓二】


◇「背水の陣内閣」会見で首相
福田首相は25日夜、首相官邸で記者会見し、自らの内閣を「『背水の陣』内閣」と名付けたうえで、「一歩でも間違えれば自民党が政権を失う。緊張した日々を送らなければいけないと自覚している」と危機感を強調した。(5面に会見要旨)
また、安倍晋三前首相が「政治とカネ」の問題で説明できない閣僚は辞任させる方針を示したことに関連し、「故意にやるのは問題だ。見過ごしや思い違いなどは程度による」と述べた。


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福田内閣(07年9月26日認証)


◇総理
福田康夫(ふくだ・やすお) 71
外務政務次官官房長官、党総務。早大政経=衆(6)群馬4 無派閥


◇総務、地方再生 再任
増田寛也(ますだ・ひろや) 55
建設省建設経済局調整官、岩手県知事、総務相。東大法=民間


◇法務 再任
鳩山邦夫(はとやま・くにお) 59
文相、労相、党選挙制度調査会長、法相。東大法=衆(10)福岡6 津島派


◇外務 ★
高村正彦(こうむら・まさひこ) 65
経済企画庁長官、外相、法相、防衛相。中大法=衆(9)山口1 高村派


◇財務 再任
額賀福志郎(ぬかが・ふくしろう) 63
防衛庁長官、経済財政担当相、財務相早大政経=衆(8)茨城2 津島派


◇文部科学 初入閣
渡海紀三朗(とかい・きさぶろう) 59
文科相、党国際局長・財務委員長。早大理工=衆(6)兵庫10 山崎派


◇厚生労働 再任
舛添要一(ますぞえ・よういち) 58
東大助教授、党参院政審会長、厚労相。東大法=参(2)比例 無派閥


◇農林水産 再任
若林正俊わかばやし・まさとし) 73
農水省課長、環境相、農相。東大法=衆(3)旧長野1 参(2)長野 町村派


◇経済産業 再任
甘利明(あまり・あきら) 58
会社員、労相、党政調会長代理、経産相。慶大法=衆(8)神奈川13 山崎派


◇国土交通 再任
冬柴鉄三(ふゆしば・てつぞう) 71
弁護士、衆院決算委員長、党幹事長、国交相。関大法=衆(7)兵庫8 公明


◇環境 再任
鴨下一郎(かもした・いちろう) 58
医学博士、副厚労相環境相。日大医院=衆(5)東京13 津島派


◇防衛
石破茂(いしば・しげる) 50
農水政務次官防衛庁副長官、防衛庁長官。慶大法=衆(7)鳥取1 津島派


◇官房、拉致問題 ★
町村信孝(まちむら・のぶたか) 62
文科相、党幹事長代理、外相。東大経=衆(8)北海道5 町村派


◇国家公安、防災 再任
泉信也(いずみ・しんや) 70
運輸省審議官、副経産相国家公安委員長。九大工=参(3)比例 二階派


◇沖縄・北方、科学技術再任
岸田文雄(きしだ・ふみお) 50
党商工部会長、副文科相、沖縄・北方担当相。早大法=衆(5)広島1 古賀派


◇金融、行革 再任
渡辺喜美(わたなべ・よしみ) 55
外相秘書官、副内閣相、行革担当相。早大政経=衆(4)栃木3 無派閥


◇経済財政 再任
大田弘子(おおた・ひろこ) 53
埼玉大院助教授、内閣府政策統括官、経済財政担当相。一橋大社=民間


少子化、男女共同 再任
上川陽子(かみかわ・ようこ) 54
三菱総研、総務政務官少子化担当相。東大教養=衆(3)静岡1 古賀派


官房副長官
大野松茂 71=衆・再任
岩城光英 57=参・再任
二橋正弘 65=事務


内閣法制局長官
宮崎礼壹 62=再任


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名鑑の見方:氏名、年齢、経歴、当選回数、選挙区、党派(自民は派閥)。閣僚の担当は▽総務、地方再生担当相=地方分権改革、道州制郵政民営化国土交通相=観光立国、海洋政策▽環境相=地球環境問題▽国家公安、防災担当相=食品安全▽沖縄・北方、科学技術担当相=国民生活、規制改革▽金融、行革担当相=公務員制度改革。★は他のポストからの横滑り。



福田首相:「背水の陣内閣」と命名…危機感あらわ(毎日新聞 2007年9月26日(水))

会見の冒頭、抱負を語る福田康夫首相=首相官邸で25日午後9時49分、内藤絵美撮影
福田康夫首相は25日夜、首相官邸で記者会見し、自らの内閣を「『背水の陣』内閣」と名付けたうえで、「一歩でも間違えれば自民党が政権を失う。緊張した日々を送らなければいけないと自覚している」と危機感を強調した。
また、安倍晋三前首相が「政治とカネ」の問題で説明できない閣僚は辞任させる方針を示したことに関連し、「故意にやるのは問題だ。見過ごしや思い違いなどは程度による。事情、事情で考えていく必要がある」と述べ、故意かどうかが判断の分かれ目になるとの認識を示した。


福田康夫首相の記者会見要旨
<冒頭発言> 全力を挙げこの難局に取り組む決意だ。自民党総裁選で2週間国会を止め、国民、議員に申し訳ないことをした。政治不信の解消に全力を傾けなければいけない。今、参院での与党過半数割れで、非常に困難な国会運営を強いられる可能性がある。野党とどういう協議をするかが大きな課題になる。


<新内閣について> 国会中で混乱を招く可能性があり、前内閣を基本的に踏襲し、必要最小限(の交代)にとどめた。麻生(太郎)氏にも協力を希望したが、入閣されなかった。(新内閣を)冗談で「背水の陣内閣」と言っている。一歩でも間違えれば自民党が政権を失う可能性がある内閣だ。緊張した日々を送らなければいけない。


テロ対策特措法 新法も一つの方法。その方向になりつつある。野党ともよく協議したい。


<官邸主導> 01年に官邸主導体制ができた。その仕組みはフルに使う。各省にまたがる問題は官邸でリーダーシップをとる機会が多いと思う。


<政治とカネの問題> 今後、閣僚に問題が起きた場合は、事情を勘案して対処していく。故意にやるのは問題があるが、見過ごしや思い違いは、程度による。


北朝鮮拉致問題 総裁選中には、「解決したい」という意欲を言った。交渉の細かい話をよく承知したうえで、方法を考えたい。


解散総選挙 国民生活に悪い影響を与えるようなことがあってはならない。景気の動向なども考え、解散の時期を探ることになる。



福田内閣:新閣僚の横顔(毎日新聞 2007年9月26日(水))

◇独特の語り口の国防族−−防衛・石破茂(50) 津島派
小泉政権防衛庁長官を務めるなど防衛政策に明るく、党を代表する国防族の一人。丁寧かつ独特の語り口で知られるが、首相の靖国神社参拝に明確に異を唱えるなどその主張ははっきりしている。父二朗氏は建設事務次官鳥取県知事も務めた。慶応大卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)でサラリーマン生活を送った。86年の衆院選で全国最年少(当時)で初当選を飾り、以降連続7回当選。
細川内閣時代の93年に自民党を離党して「改革の会」を設立。翌年には新進党に合流したが、97年に自民党に復党した。北朝鮮拉致問題解決にも取り組み、国会の拉致議連会長なども務めた。


◇科学技術振興訴え初入閣−−文科相渡海紀三朗(59) 山崎派
早大理工学部出身で、1級建築士の資格を持ち、設計会社で陸上競技場を設計するなどの実務経験がある。安倍晋太郎外相の秘書を経て、86年の衆院選で初当選。国家の基礎となる科学技術振興の重要性を訴えてきた。当選6回、今回が待望の初入閣だ。
元々は旧安倍派に所属していたが93年、旧竹下派の分裂に端を発した政界再編に際し、新党さきがけ結成に参加し、自民党を離党。非自民の細川連立政権づくりに奔走した。96年の衆院選で落選したことから自民党に戻り、00年に返り咲いた。建設相、自治相などを歴任した父元三郎氏は福田康夫首相の父赳夫元首相の側近。


◇豊富な経験、2度目の外相−−外相・高村正彦(65) 高村派
安倍改造内閣で防衛相に就任、福田内閣でも閣内にとどまり、2度目の外相(前回は小渕内閣)を務めることになった。
初入閣は村山内閣の経企庁長官、森内閣でも法相を務め、ニューリーダーとして頭角を現した。03年には小泉純一郎首相が再選を目指した総裁選に立候補、派閥の議員数を上回る54票を獲得して存在感を示した。
郵政民営化など小泉路線には慎重だったが、安倍政権誕生に際しては派閥を挙げて支持に回った。父坂彦氏は徳山市長(山口県)、衆院議員を務めた。


アジア外交は「強硬路線」−−官房長官町村信孝(62) 町村派
町村派会長として、「ポスト安倍」に一時意欲を見せたが、同派閥の福田康夫氏の立候補で取りやめた。派閥会長の官房長官就任は極めて異例となる。
小泉政権で約1年、安倍改造内閣でも約1カ月外相を務めた。アジア外交では、中国に対するODA(政府開発援助)削減を提唱、対北朝鮮でも経済制裁発動を促すなど「強硬派」のイメージが強い。アジア重視で柔軟路線の福田首相との呼吸合わせが問われることになりそうだ。音楽、バレエ、演劇鑑賞と多趣味。



小沢民主代表:改めて早期の衆院解散・総選挙求める(毎日新聞 2007年9月26日(水))

民主党小沢一郎代表は25日、国会内で記者会見し、福田康夫首相について「自公政権であることは誰が変わっても同じだ。1日も早く終わってもらう以外ない」と述べ、改めて早期の衆院解散・総選挙を求める考えを示した。
小沢氏は「首相指名選挙でも衆参の意思が異なった。参院が最も直近の主権者の意思を反映した議席だ。衆院でもう一度国民の判断をあおぐしかない」と強調。また首相との党首会談に関しては「話し合い自体には応じる。ただ論戦は国会でいくらでもやれる」と述べるにとどまった。
インド洋での自衛隊の給油活動で、首相が新法を出す意向を示していることについては「考えは党として決まっている」と述べ、反対姿勢を変えない考えを示した。一方で民主党としての対案作成に関して「参院では可決できるので(対案を出せれば)いいかもしれない。速やかに結論を出す」と含みを残した。



福田内閣:野党は対決姿勢強める…「話し合い路線」応じず(毎日新聞 2007年9月26日(水))

福田新内閣の発足で、休会状態だった国会が再開される。民主党など野党は、提出済みの年金保険料流用禁止法案のほか、▽1円以上から領収書の添付を義務づける政治資金規正法改正案▽イラク復興特別措置法の廃止法案▽農家への戸別所得補償法案−−の計3本を新たに参院に提出し、政府・与党に迫る。安倍晋三前内閣の閣僚の大半が留任したことで「自民党が守りに入った」(党幹部)と見て、福田康夫首相の呼びかける「話し合い路線」には応じず対決姿勢を強めていく。
山岡賢次民主党国対委員長は「総花的で平凡な内閣だ。安倍内閣と変わらずすぐに幕引きになる」と批判した。
福田首相は年金制度改革などでも野党側に協議を呼びかけているが、総務相財務相厚生労働相などの重要閣僚が安倍内閣から変わらないままで「話し合い」を掲げる姿勢に対し「自民党が本気ではないことがよくわかった」(若手参院議員)との声も漏れる。
一方、外相に横滑りさせた高村正彦防衛相の後任に防衛通の石破茂氏を据えた人事には警戒感を抱いている。外務防衛担当の党幹部は「石破氏が相手だと国会審議でも民主党も試される」と気を引き締めていた。
共産党市田忠義書記局長は国会内で記者団に「安倍お下がり内閣という印象だ」と論評。社民党福島瑞穂党首は東京都内で「新しいことをやっていこうという問題提起が見えない内向きの内閣だ」と批判した。【須藤孝】