また投げ出し辞任 早期に解散総選挙を

福田首相:退陣表明、緊急会見「新布陣で政策実現を」 後継、麻生氏が軸(毎日新聞 2008年9月2日(火))

◇就任1年
◇自民総裁選へ、今秋にも解散か
福田康夫首相は1日午後9時半から、首相官邸で緊急に記者会見し、「新しい布陣の下、政策実現を図るためにきょう辞任を決意した」と述べ、退陣する考えを正式に表明した。国会運営や衆院選の時期を巡って連立を組む公明党との亀裂が生じたことから、与党内の求心力が低下。民主党が攻勢を強める中で臨時国会を乗り切るのは困難と判断し、自らの退陣によって事態の打開を図ったものだ。昨年9月12日に安倍晋三首相(当時)が突然、辞任表明したのに続き、福田首相もわずか1年足らずで政権を投げ出す異常事態になった。【中田卓二】
12日に予定されていた臨時国会の召集は下旬にずれこむ見通し。辞任表明に先立ち、首相は1日夕、首相官邸自民党麻生太郎幹事長、町村信孝官房長官と会談。退陣する意向を伝えた。後継選びは麻生氏を軸に進むとみられ、麻生氏は1日夜、「(自分が)適任と思わないわけではない」と意欲を漏らした。自民党は総裁選の過程で、新首相への注目を高め、新首相効果が持続可能な今秋にも衆院解散が行われる可能性が出てきた。
会見で、首相は「先の国会では民主党が重要案件に対応せず、国会の駆け引きで審議引き延ばしや審議拒否を行った。その結果決めるべきことがなかなか決まらない」と民主党を批判。「国民生活を第一に考えるなら、今ここで政治的な空白を生じてはならない。政治空白を作らない一番いい時期だ」と辞任の理由を説明した。
首相は「内閣支持率の問題もあるかもしれない」と述べるとともに、辞任を決意した時期については「先週末に最終的な決断をした」と述べ、原油・物価高を受けた総合経済対策の決定が節目になったことを明かした。
首相は8月1日に内閣を改造し、臨時国会では総合経済対策、新テロ対策特別措置法の延長、消費者庁関連法案の成立などに取り組む意欲を示していた。しかし、公明党臨時国会の早期召集に難色を示し、新テロ特措法改正の見通しが立たないことや、「定額減税」で政府への圧力を強めていることを受け、政権を維持するのは難しいと判断した。安倍前首相も昨年8月27日に内閣改造を行ったが、翌月12日に退陣表明、同月26日に退陣した。
首相の辞任表明を受け、自民党総裁選管理委員会は総裁選日程を2日に決める方向だ。総裁選では麻生氏が最有力候補とされるが、麻生氏の経済財政政策に反発する中川秀直元幹事長らは小池百合子元防衛相らを擁立する可能性もある。



首相退陣表明:突然の緊急会見 後継は麻生氏軸に調整(毎日新聞 2008年9月2日(火))

福田康夫首相は1日午後9時半から、首相官邸で緊急に記者会見し、「新しい布陣の下、政策実現を図るためにきょう辞任を決意した」と述べ、退陣する考えを正式に表明した。国会運営や衆院選の時期を巡って連立を組む公明党との亀裂が生じたことから、与党内の求心力が低下。民主党が攻勢を強める中で臨時国会を乗り切るのは困難と判断し、自らの退陣によって事態の打開を図ったものだ。昨年9月12日に安倍晋三首相(当時)が突然、辞任表明したのに続き、福田首相もわずか1年足らずで政権を投げ出す異常事態になった。
12日に予定されていた臨時国会の召集は下旬にずれこむ見通し。辞任表明に先立ち、首相は1日夕、首相官邸自民党麻生太郎幹事長、町村信孝官房長官と会談。退陣する意向を伝えた。後継選びは麻生氏を軸に進むとみられ、麻生氏は1日夜、記者団から総裁選出馬の意思を問われ「(自分が)適任と思わないわけではない」と意欲を漏らした。自民党は総裁選の過程で、新首相への注目を高め、新首相効果が持続可能な今秋にも衆院解散が行われる可能性が出てきた。
会見で、首相は「先の国会では民主党が重要案件に対応せず、国会の駆け引きで審議引き延ばしや審議拒否を行った。その結果決めるべきことがなかなか決まらない」と民主党を厳しく批判。「国民生活を第一に考えるなら、今ここで政治の駆け引きで政治的な空白を生じてはならない。政治空白を作らない一番いい時期だ」と辞任の理由を説明した。
首相は「内閣支持率の問題もあるかもしれない」と述べるとともに、辞任を決意した時期については「先週末に最終的な決断をした」と述べ、原油・物価高を受けた総合経済対策の決定が節目になったことを明かした。
首相は8月1日に内閣を改造し、臨時国会では総合経済対策、新テロ対策特別措置法の延長、消費者庁関連法案の成立などに取り組む意欲を示していた。しかし、公明党臨時国会の早期召集に難色を示し、新テロ特措法改正の見通しが立たないことや、「定額減税」などで政府への圧力を強めていることを受け、これ以上政権を維持するのは難しいと判断した。安倍前首相も昨年8月27日に内閣改造を行ったが、翌月12日に退陣表明、同月26日に退陣した。2代続けて内閣改造から短期間での退陣となった。
首相の辞任表明を受け、自民党総裁選管理委員会は総裁選日程を2日に決める方向だ。総裁選では麻生氏が最有力候補とされるが、麻生氏の経済財政政策に反発する中川秀直元幹事長らは小池百合子元防衛相らを擁立し、対抗する可能性もある。【中田卓二】



「無責任極まりない」「安心内閣、どこへ」野党非難(朝日新聞 2008年9月1日(月))

「無責任だ」「2代続けての政権投げ出しだ」。野党各党の幹部は1日夜、福田首相の退陣表明会見を受け、相次いで首相の姿勢を厳しく批判し、一斉に解散・総選挙を求めた。
民主党福山哲郎政調会長代理は「内閣改造をして、国会召集日まで決めて投げ出した。無責任極まりない。自民党が政権を運営出来ないのは明白だ。安倍政権から続けて2回連続政権を投げ出した政党に政権を担う資格はない。本来なら福田首相の手で解散すべきなのに、自民党政権延命のために退陣する行為を、国民は理解出来ない」と批判した。
共産党の志位委員長は国会内で記者団に対し、「きわめて無責任な政権投げ出し。安倍政権に続き2人続けて臨時国会直前に投げ出すのは、自公政治が政治的な解体状況にあるということ。国民の暮らしが非常事態になっている。こういう問題をどうするか、国民の前で徹底的に審議し、争点をはっきりさせたうえで審判を仰ぐべきだ」と語った。
社民党の福島党首は国会内で記者団に対し、「まったくひどいものだと思う。選挙のために福田首相を辞めさせる自民党も、政権を投げ出す福田首相も、国民のことを全く考えていない。国民投げ捨て内閣だ。『安心実現内閣』と言っていたのはどこに行ったか。政権をたらい回しするために全部ほうりなげる。ひどいものだ」と批判した。
さらに「去年は『僕ちゃんの投げ捨て内閣』。今回は『フフフ私の投げ捨て内閣』だ。どちらも臨時国会の論戦で立ち往生するのが嫌で投げ捨ててしまう。1ミリも国民のことを思っていない。あきれている」と解散・総選挙を求めた。
国民新党亀井久興幹事長も党本部で記者団に対し、「あまりにも無責任すぎる。安倍さんと似た辞め方だ。今後、誰がなるか知らないが、自民党政権担当能力はなくなった。この際、早く解散して国民に信を問うべきだ」と述べた。



与党議員も「リーダーとして無責任」(朝日新聞 2008年9月1日(月))

小泉チルドレン」の一人、自民党藤野真紀子衆院議員は、都内の自宅に向かう車中で、母親からかかってきた携帯電話で福田首相の辞任を知った。「本当にびっくり。内閣改造で思ったより支持率が上がらなかったから、国会運営に支障をきたさない形を考えられたんだろうか」と語った。
与党からも厳しい声があがった。05年の「郵政総選挙」で山梨2区で「刺客組」として立候補した長崎幸太郎衆院議員(比例南関東ブロック)は「経済対策など、やるべきことをやらずに辞めるのはリーダーとして無責任。失望した」と批判した。自身の選挙区の党公認漏れが決まっている次期総選挙については、「新首相のもとで、勢いのあるうちに解散する可能性がある」と話した。
自民党坂本剛二衆院議員(比例東北ブロック)は「総理はもともと早期に国会を召集したかった。それができなかったことが影響しているのかもしれない。民主党は代表選に小沢代表だけが立候補している。次の総裁選で民主党と比較して中身の濃い議論ができるかどうかが焦点だろう」と話した。
自民党二田孝治衆院議員(比例東北ブロック)は記者会見の模様を自宅のテレビで見ていた。首相辞任のニュースを聞いて、頭に浮かんだのは「次の総理に誰がなるのか」だったという。
突然の辞任表明については、「自民党にとって決してプラスにはならない。安倍氏に続いて唐突との印象を国民に与えるからだ」と話した。
総合経済対策で道筋をつけたため、混乱しかねない臨時国会前というタイミングで辞任を決断したとみている。「今日から総裁選だ。総選挙では改革を前面に出して、新総裁を中心に民主党との対立軸を明確に示して戦ってほしい」と話した。



「常識的に考えられない」地方の自民からも疑問・批判(朝日新聞 2008年9月1日(月))

自民党千葉県連の本清秀雄幹事長は「突然のことで、とにかく驚いている。総裁選もやらなくちゃいけない。総理は今の時期がいいと考えたと言うが、予算をきちんと通してからでもよかったのでは」と語った。
一方、民主党栃木県連の佐藤栄幹事長は「責任放棄だ」と厳しく糾弾した。「自民党の末期的症状だ。政権担当能力を無くしている。理解を超えている」と述べた。

「常識的にちょっと考えられない」。自民党福島県連の佐藤憲保幹事長は驚きを隠せなかった。「内閣改造後、次の国会で地方対策に重点を置くと聞いていたのに。国の最高責任者として熟慮の上の判断だと思うが、ただただ残念だ」と話した。
自民党茨城県連の海野透幹事長代行も「こんなサプライズ。安倍さんと2代続けて……」と言葉を失った。「福田さんとすれば、自民党を救うための苦渋の選択だと思う。自民党として立て直せる人間を出すしかない」
福田首相の会見をテレビで見た自民党富山県連の鹿熊正一幹事長は「福田首相の会見は、説明ではなく心情の吐露だ。支持率の低迷が意欲の減退につながったのだろう」と話した。



民主議員は「総選挙へ、一気に動き出す」(朝日新聞 2008年9月1日(月))

次回総選挙を政権奪取のチャンスと位置づける民主党
「代表選挙に小沢代表が出馬すると表明した日にぶつけてきたな」。牧義夫衆院議員(愛知4区)はこの日の福田首相の辞任会見を、自民党の「対民主党の戦略」と見る。「自民党はカウンターパンチだと思っているのかもしれないけど、臨時国会を迎える直前に辞めるなんて、彼らにとっていいことないはず」
前田雄吉衆院議員(比例東海)は名古屋市内で会合を開いていた午後8時半ごろ、秘書から一報を聞いた。「これで総選挙が早まった。一気に動き出しますよ」と冷静な口ぶり。「先週末ごろから、民主党にもうわさは伝わっていた。内閣が若いうちに選挙を打てという田中角栄氏の定石通り。驚きはない」。福田首相の辞任会見の直前、民主党本部から招集がかかった。小沢代表が各議員の受け止めを聞き、今後の対応を話し合いたいと希望しているという。
愛知県の共産党県委員会の岩中正巳委員長は「小泉路線が続き、国民生活が厳しい中での辞任は当然だ。政策で追いつめられた結果だ」。次の総選挙については「公明党の意向だろうが、福田政権では解散・総選挙ができないから、首をすり替えようということだろう。でも、そんなことをしても、そんなに世論は甘くない」と厳しく指摘した。