「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/3 国事行為 内閣が「承認」か「進言」か(毎日新聞 2013年11月22日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 第3条からは天皇の国事行為について定められているね。国事行為って何?
先生 たとえば、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命したり、国会を召集したり……。国家に関係する行為のことですね。具体的な内容は第6条と第7条に挙げられています。
憲太 でも、「天皇は国の政治に関わらない」はずだけど。
先生 第4条を見てください。「天皇は国政に関する権能を有しない」と書かれています。つまり、これらの行為は形式的・儀礼的な行為で、国の政治について何かを決定する法的な力は天皇にないということですね。
憲太 「内閣の助言と承認」はどうやって行われるの?
先生 これは、内閣総理大臣国務大臣が出席する「閣議」で決められます。
憲太 自民党案では「進言」という言葉に変わっているね。
先生 自民党の「草案Q&A」では「天皇の行為に対して『承認』とは礼を失することから、『進言』という言葉に統一しました」と説明しています。「進言」は「目上の者に対して、意見を述べること」という意味ですね。日本弁護士連合会憲法委員会副委員長の伊藤真弁護士は「決定権が天皇にあるように読める」と指摘しています。
憲太 第5条は「摂政(せっしょう)」についての規定だね。
先生 皇室について定めた法律「皇室典範」には、(1)天皇が成年に達しないとき(2)天皇が精神や身体に、重い病気を患ったり、重大な事故に遭ったりして、国事行為を自らできないとき、に摂政を置くとされています。摂政には皇族が就きますが、憲法施行後、実際に置かれたことは一度もありません。=次回は第6〜8条
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【現行憲法
第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第4条1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する機能を有しない。
    2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第5条 皇室典範の定めるところにより摂政(せっしょう)を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第1項の規定を準用する。


自民党案】
第5条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
第6条3 天皇は、法律の定めるところにより、前2項の行為を委任することができる。
    4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
第7条1 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、その国事に関する行為を行う。
    2 第5条及び前条第4項の規定は、摂政について準用する。