「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/4 天皇の公的行為 範囲の解釈に議論も(毎日新聞 2013年11月22日(金))

憲太君 第6条と第7条は天皇の国事行為を具体的に挙げているんだね。
先生 第6条では、行政権を持つ内閣と司法権を持つ裁判所で最高の地位に就く者を天皇が任命すると定め、第7条で、その他の10の行為を挙げています。第4条2項の「国事行為の委任」を含め、天皇の国事行為は13の行為に限られています。
憲太 天皇陛下が外国を訪れたりするのを、テレビのニュースで見たことがあるけど。そう言えば、先月はゆるキャラくまモン」を見学されてたよ。
先生 たしかに、天皇は国事行為の他にも、数多くの公務を行っていますね。
憲太 でも、第4条に「国事に関する行為のみ」を行うと書いてあったけど。
先生 鋭い指摘ですね。こうした行為を憲法上どう考えるかは、学者の間でも意見が一致しません。政府は「象徴としての地位に基づく公的な行為」で「憲法上明文の根拠はないが、当然認められる」と説明しています。
憲太 自民党案の第6条5項で書かれているのは、公的行為のことだよね。
先生 そうです。自民党の「草案Q&A」では「憲法上明確に規定することで、こうした議論を結着(けっちゃく)させることになる」としています。自民党案は、憲太君が挙げた第4条の「のみ」という言葉も削りましたね。
憲太 憲法に明記すれば、すっきりするね。
先生 そう単純な問題でもありません。自民党案では「その他の公的な行為を行う」となっていて、「公的行為が際限なく広がれば、天皇の政治利用につながる」との指摘もあります。=次回は自民党案第3、4条。26日掲載です
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【現行憲法
第6条1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
    2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行ふこと。
第8条 皇室に財産を譲り渡し、又(また)は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。


自民党案】
第6条1 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
    2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員通常選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行うこと。
    5 第1項及び第2項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。